書評Books 戦国時代を生き抜いた信仰者

西日本福音ルーテル教会・青谷福音ルーテル教会 牧師 前川隆一

 

『宣教師フロイスが記した 明智光秀と細川ガラシャ』
守部喜雅 著
四六判 1,300円+税
フォレストブックス

 

『宣教師フロイスが記した明智光秀と細川ガラシャ』を読ませていただきました。「買い」だと思いました。その主な三つの理由。
その一、信長、光秀が生きた戦国時代が、リアルに目の前に描き出される。この本の主な資料は、ルイス・フロイスの『日本史』です。もともとの『日本史』は、フロイスによる宣教地リポートでした。けれども、あまりにもその記述が事細かであるため、お蔵入りになっていたのを、「戦国時代の日本史研究にとって貴重な資料」ということで、近年になって発掘、邦訳されたとのことでした。

たとえば、あの「本能寺の変」に関しても、日本側の一級資料である『信長公記』と『日本史』とが併記されています。読み比べてみると、『信長公記』がいかにも講壇調であるのに対して、『日本史』はリアルであり、ジャーナリスティックです。その時代の空気を感じることができるような世界がそこにあります。

その二、フロイスをはじめとする戦国時代の信仰者の信仰に教えられる。信長は、キリシタンに対して、「自領内でデウスの教えを説き、教会を建設することを保証する」(本文九〇頁)と約束してくれたようです。ここまで、好意的に迎えられたなら、のぼせ上ってもおかしくないところですが、「彼を支配していた傲慢さと尊大さは非常なもので、そのため、この不幸にして哀れな人物は……」(九〇~九一頁)と、信長を神の前には一個の哀れな罪人と見ているフロイスのまなざしには、教えられるところがあると思いました。その他、あの戦国の殺伐とした時代に生きた綺羅星のような信仰者の信仰が紹介されています。「散りぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ」(一七七頁)。それが、あの細川ガラシャの辞世の句であったということです。
その三、伝道文書として用いられる。NHK大河ドラマ「麒麟が来る」放映中の今、読み終わった後、祈りをもって、未信者の方へプレゼントする本として、この本は大いに用いられると思いました。