書評Books 「日本のキリスト者、捨てたもんじゃない」と気づく社会派ルポマンガ

『ななさんぽ 弱さと回復の“現場”で神がいるのか考えた』
みなみななみ 著
A5変型判 1,400円+税
フォレストブックス

文筆家 宮 葉子

教会の本棚には、図書係である私の好みを反映して、ななみさんのルポマンガがほとんど揃っています。戦争や在留外国人など、ふだんの暮らしからは距離のある事がらが、ななみさんの手にかかると、知る楽しさとともに、共感をもって考えるすじみちを与えてくれます。
そのななみさんが、またしても果敢に、日本の現場に三年間も足を運び続けたのが本書です。目次に目を通すと、DV、高齢者、介護、精神障害、アルコール依存者、ホームレス、ひきこもり、放射能問題……と、取材先は三十以上に及ぶ社会派ルポマンガです。
冒頭から「人身売買」という重いテーマで始まります。でも、そこはななみ節。タイトルにある「さんぽ」という軽やかな響きのとおり、著者の歩みに伴われながら、絵柄の親しみやすさもあって気楽に読み進められます。社会的に弱い立場にいる人たちのリアルを知っては、ななみキャラと同じく読み手も「ひえー」と仰天し、そこに仕えるキリスト者の生き様を知っては、「すごいすごい」と感嘆する。
たとえば、横浜寿町で、二十年間一日たりとも休まず、ドヤ街に暮らす人々に、みことばと食事を毎日届けている牧師夫婦の話があります。使命に本気で生きる人たちの行動力は眩しい。感動すると同時に、自分の生温さに恥ずかしくなるのですが、等身大の著者が自らを省み、その飾らない反応に和みます。そうして、著者の心と共に一話ずつ日本の現場を歩くうちに、不思議と私の心にも爽やかな風が吹いてきました。
ひとつには、日本のキリスト者、捨てたもんじゃないという発見でしょうか。また、一人一人に賜物と召しがあり、誰もが特別な物語を神と共に生きている。その物語に自分も生かされているのだから、人と比べず、置かれた場所で安心して神の大きな愛の中にざっぷんと浸かり、粛々と目の前の道を行けばいい。こう肯定してもらったような安心感でしょうか。教会以外でキリスト者に出会う機会の少ない日本のユースたちにも手渡したいと思います。そこはマンガの力。きっと読んで、何かを感じてくれることでしょう。