書評 Books これこそ、声に出して読みたい本

株式会社・ライフセンタービブロス堂 店長 中村信義

 

『方言聖句
津軽弁・大阪弁・沖縄弁 篇』
鎌田新、岩橋竜介、
国吉守 著
B6判・定価880円(税込)
フォレストブックス

 

本書の魅力は、「はじめに」にあるとおり、(みことばを)「より味わい深く心に響く」というひと言に集約されると思います。おススメは方言聖句を見よう見まねでも、声に出して読んでみることです。今回は私のベスト方言聖句の一部を個人的偏りのある妄想も交えて紹介し、書評に代えたいと思います。

まずは津軽弁篇。「なんも心配さねでよ」(ピリピ4・6)。暖炉のそばで、極寒の冬を幾度も耐え抜いてきたおばあちゃんが、しわの深い笑顔で語りかけてくるような安心感。

次は大阪弁篇。「わての お父ちゃんの家には、住まいが ぎょうさんおまんねん」(ヨハネ14・2)。思わず笑っちゃいました。これは名訳だと思います(笑)。本当に住まいがたくさんある、というのがひと言で十分に伝わってきます。

そして私の地元、沖縄弁篇はこれです。「くさやしうりてぃ、はなやちるん」(Ⅰペテロ1・24)。はじめに声に出して読んだときはリズム感があって、どこかかわいらしく感じました。けれども、沖縄弁篇のはじめに城倉翼氏の文章を読み、訳された国吉守氏が少年時代に沖縄戦で両親を亡くされたこと、焼け野原となった町を呆然と眺めたであろうことを想像しながら声のトーンを落としてあらためて読むと、「くさやしうりてぃ、はなやちるん」の方言が、なんだか深い悲しみと空虚感を帯びたかのように響き、胸が締めつけられるような思いがしました。でもそれだけに、のちに続く「やしが(しかし)」から続く方言聖句が、主のみことばの確かさを力強く、確信をもって言い表しているように感じられます。

津軽弁、大阪弁、沖縄弁や、各著者にゆかりのある方はもちろん、まったく接点がないという方も、テレビやインターネットで各方言のなんとなくの雰囲気はつかんでいると思いますので、ぜひ方言聖句を声に出して味わって、妄想して(?)みてください。きっと新たな気づきがあって、教えられ、励まされ、慰められることでしょう。