ブック・レビュー 『まるかじり創世記~祝福は苦しみの向こうに』

『まるかじり創世記~祝福は苦しみの向こうに』
横山 幹雄
聖書教会連盟 内灘聖書教会牧師

神の祝福、丸かじり ! 『まるかじり創世記』?新しい東海林さだおの「丸かじりシリーズ」かと思いましたら、佐藤彰先生の新しい本でした。「丸かじりシリーズ」はタコの丸かじりから始まるあれやこれやの食べ物にまつわるエッセイですが、佐藤先生のそれは蜜よりも甘い神の言葉の丸かじりです。

 前書きによると、まだお若い著者が、さらに二十年ほど前の三十代の初めに書いたらしい。いったい何を思って書いたのか、どんな事情で書いたのか、記憶にないのだとあります。引越しのごたごたの中で発見された原稿が、今回、日の目を見たのだと言うのです。そのいきさつを知ってニンマリさせられました。私も、昔の自分のメッセージをインターネットで聞くことがあります。声は確かに若かりし日の私です。しかし、その内容はまったく記憶になくて、実に新鮮で、「へ~、いいこと言ってる!」とうなります。すかさず家内が言い放ちます。「それは聖書がいいからよ!」はい、ごもっとも!

 佐藤彰先生は、私が尊敬してやまない神の器です。そのメッセージ、その著書、その伝道牧会の姿勢、教会の歩みなどにいつも注目し、教えられることばかりです。人の心をしっかりつかんで、ぐいぐいと見えざる方のもとへと引っ張ってゆく賜物は見事です。それは、この本の中でも発揮されています。人間の罪深さ、失敗、絶望、悲しみの背後に、恵もうとして待っておられる神のやさしい御顔があることを示してくれます。創世記の登場人物が織りなす人間模様は刺繍の裏側で、何のことやらわかりません。しかし、その表側には、見事な創造主のご計画が着々と進められていることを確信させてくれます。創世記の流れをたどりながら、今も同じ神が読者の日々の歩み、人生をも導いておられることを気づかせ、信じさせてくれます。

 個人のデボーションで、グループでの聖書の学びに、この本は豊かな祝福をもたらしてくれます。二十年物のお漬物のようなかぐわしい香りを伴って!