書評Books 教会への静かな挑戦

日本キリスト教会函館相生教会 牧師  久野 牧

増補改訂『「バルメン宣言」を読む―告白に生きる信仰』
朝岡勝 著

B6判 1,500円+税
いのちのことば社

本書は、二〇一一年に同書名で二十一世紀ブックレットとして出版されたものが版を重ねたのち、このたび、増補改訂版として出版されたものである。その読みやすさ、内容の豊かさ、教会への静かな挑戦を含んだものということによって、今日の教会にとって好適の書である。この書の成立の経緯は本書に譲るとして、初版との違いの一つは、序章に「いま、この時に『バルメン宣言』を読むということ」が追加され、バルメン宣言を読むことの意義が強調されている点である。そこで朝岡勝牧師は、バルメン宣言を学ぶことの狙いには「いまの時代の私たちの信仰を整え、これからの終末の時代にイエス・キリストを主と告白し続ける信仰のリアリティーを身に着けたいとの願い」が根底にあることを述べておられる。なぜその願いが出てくるのか。それは日本の教会が、今、「信仰告白の事態」の中に置かれているからである(二三頁以下)。
今日の政治的状況をはじめとして、教育、経済、外交、倫理等の諸状況の中で、主イエス・キリストこそがすべてのものが究極的に従うべき主である、との告白と証しをなすことが強く教会に求められている。そうすることができる教会の形成を目指さなければならない。それは、教会のかしらである主の要請であるだけでなく、教会が建てられているこの世が必要としていることである。教会のみが明らかにすることができる真理を教会は委ねられている。それを明らかにしない教会であってはならない、という明確な認識が著者にあることが、本書からひしひしと伝わってくる。
そのような教会の形成のために、ナチス・ドイツとの教会闘争の中で生み出された「バルメン宣言」は、最もふさわしい歴史的文書の一つである。「国家との明確な対峙の姿勢を持たず、日本的なものとの衝突を避ける日本の教界の体質は、いまもなお根深く残っている」(一九九頁)ことを知り、その上でそうした体質を克服するためにも「バルメン宣言」の学びは必須である。信仰の母体は教会である。その教会は学ぶ教会でなければならない。