書評Books 未信者が聖書に触れるきっかけとして有用な本

日本ナザレン教団 鹿児島キリスト教会 牧師 久保木聡

『登場人物で読むと聖書はわかりやすい』
フォレストブックス 編

A5判 1,500円+税
フォレストブックス

「大切な家族や友人に聖書が伝える救いを伝えたい! でも、どこから手をつけてよいか、よくわからない」。そんな悩みの中にあるあなたが、福音を伝えるきっかけになりそうな本『登場人物で読むと聖書はわかりやすい』が出版されました。
本書の特徴は、聖書の幾多の登場人物を描写しながらも、「信じましょう」という呼びかけがないことです。残念ながらクリスチャンが「信じませんか」という空気を醸し出しているから、未信者の抵抗感が強くなり、信じる以前の福音の中身を聞くことにすら心を閉ざすことがあります。本書を読みながら、江戸時代初期の大坂の陣を思い出しました。徳川家康が大坂冬の陣で大坂城にいる豊臣家を攻めあぐねて、一度、和睦をし、大坂城の外堀も内堀も埋めてしまいます。その結果、大坂城は丸裸となったため、続く夏の陣で豊臣家は敗北しました。「信じましょう」と迫るだけが伝道ではなく、聖書を知ってもらって相手の外堀と内堀を埋めることも伝道の大切な備えとなるのです。
本書の表紙を見ておわかりのとおり、本書の中には聖書を物語る西洋の絵画がちりばめられています。また冒頭の「聖書バトル10番勝負」はスポーツ新聞、ゴシップ誌でも見るかのような色使い、レイアウトです。聖書が文字ばかりゆえに食わず嫌いになっている人がいても、聖書の世界に触れるきっかけになるでしょう。とは言え、文章にはゴシップ誌にありがちな下品な描写はなく、品格を保ちつつ、小学校の高学年でも理解できるような平易な文章で聖書の登場人物たちを描き続けています。
創世記からヨハネの黙示録まで、聖書の全体像を理解しやすいように図表や地図を多用し、全ページをフルカラーで、先に述べた西洋の絵画も含め聖書を視覚的に理解できるよう工夫されています。
未信者へのプレゼントとしても適切でしょうし、クリスチャンとして一冊持って、聖書通読の友として、また説教で聞いた聖書の人物を掘り下げていくうえでも、有用な本としてオススメします。