わたしたちに優しいまなざしを回復させる写真集

『都会に咲く小さな草花さえも』
市川五月 写真・文
A6判 1,300円+税
フォレストブックス

日本キリスト合同教会 板橋教会 牧師 大井 満

敬愛する写真家、市川五月さんの写真集『都会に咲く小さな草花さえも』が出版された。わたしたちがふだん気にも留めない、あるいは視界に入ったとしても「雑草」とみなして、通り過ぎたり、踏みつけたりしてしまうような小さな草花は、都会にもたくさん生えている。五月さんは、そんな草花をはじめとする都会の被造物に目を留めて、シャッターを切っている。彼女にとっては雑草なんてものは存在しない。小さな草花であっても、それは創造主なる神が心を込めてお造りになった、ありのままで愛されているすばらしい作品なのだ。
五月さんとの出会いは、一九八五年。大きな伝道集会の写真撮影と、カメラマンたちのとりまとめをお願いしたのだ。以来、教会での結婚式、初孫の「ニューボーン・フォト」の撮影などをお願いし、また彼女が主宰する撮影会に参加させていただき、SNSでの交流も続けている。そのような交わりの中で、五月さんが被写体に対する愛に満ちたまなざしを感じる。もちろんプロカメラマンに必要なのは、被写体への「まなざし」だけではない。確かな技術や知識が必要だ。五月さんはその両方を兼ね備え、それを支えるのが、彼女の信仰である。
先日、初対面の方を病院に訪問することになった。若いときに信仰をもたれたが、その後かなり長い期間、教会から離れていた方だ。神さまがくださった不思議なきっかけで、この方との出会いがあり、この方ももう一度神さまを求めようとしておられる。どの御言葉を読むのがいいだろうか、どのように話しかけようかなどと祈っていたとき、この本を思い出した。さっそく手に入れてお届けしたら、とても喜んでくださった。
下を向いて歩いていたら/堅いコンクリートの狭間で/一生懸命、生きようとしている草があった。/まるで自分自身を見ているようだった。
一枚一枚の写真、添えられた彼女の言葉、そして聖書の言葉が、わたしたちに優しいまなざしを回復させる、おすすめの写真集だ。