戦火をくぐり抜けたクリスチャン
もっと読みたい!戦火をくぐり抜けたクリスチャンの本

香港捕虜収容所通訳の足跡
『「アンクル・ジョン」とよばれた男』
リアム・ノーラン 著
菅野和憲 訳
B6判 1,575円 (書評)


「いのちのことば」二〇〇五年十月号(評者 徳善義和 日本ルーテル神学校 前校長)より抜粋 本著は、小柄で物静かで、いつも姿勢の正しい紳士だったひとりのルーテル教会牧師の戦争体験物語である。 渡辺潔牧師は米国留学の経験を見込まれ、通訳として香港に行かされる。そこで戦争捕虜や抑留者に対する、日本軍の通訳となる。日本軍の勝利に誇りをもち、日本兵の横暴に心を痛め、怒る、普通の心をもったひとりの人間である。 だから、抑留されている人たちとも人間として出会う心を忘れない。飢えや病や孤独に苦しむ人たちのために身の危険を冒して、秘かに医薬品などを運び込む。そうしながらも、軍の懲罰を恐れずにはおられない。だから、これは英雄の物語ではない。しかし、投げ込まれた状況の中で、人として、クリスチャンとして、こう生きざるを得なかった普通の人の生きた証の記録である。自らの祈り、関わる人々のとりなしの祈りがこの人の日々を支えた、と心に刻んだ。

若い世代に、いのちの尊さと
平和の重要性を訴える
『戦争を知らないあなたへ』
クリスチャン新聞編
A5判 1,050円


(書評)「いのちのことば」二〇〇八年八月号(評者 関田寛雄 日本基督教団牧師・青山学院大学名誉教授)より抜粋

 今や日本は「市民のための国家」であることをやめ、再び「国家のための国民」作りに狂奔し始めている。 この時に、本書が出版されたことの意義はきわめて大きい。「あの巨大な天皇制全体主義の嵐は、どのようにして起こり、何をもたらしたのか」(七二頁)。「戦争を起こそうとするとき、……弾圧が起こり、密告などによって、隣人、友人、親戚の間ですら疑心暗鬼が生じるのです。ですから、私は何としても、平和憲法を守り抜く努力をしたい」(八七・八八頁)。 本書に執筆されている十九人の方々は、深刻な戦争における被害と加害の経験を生きて来た方々で、そのことばは何びとも否定できない真実に裏付けられている。戦争という狂気の過去が風化しつつある時、本書が特に若い方々に読まれることを願っている。

日本という国に
誠実に向き合った十四人の証言
『私の「愛国心」』
クリスチャン新聞編
A5判 735円


(書評)「いのちのことば」二〇〇七年八月号(評者 高桑照雄 中央日本聖書学院学院長)より抜粋
 本書に登場する十四人の著者たちの背景は多彩で、公立学校教師、元軍人、被爆者、在外日本人、在日コリアン、牧師など実に様々です。共通する点は皆、キリスト者としてこの日本という国に誠実に向き合ってきたことです。悩み戦いながら国との係わりの中で自分史を証ししつつ、読者に問いかけます。 国を愛するとはどのようなことなのでしょうか。 わたしたちが素朴に思い浮かべる、生まれ育った郷土や同胞を愛することでしょうか。それを求める側からすれば、「国」とは人々を支配統治する組織体制、政府自らをも指すでしょう。 日本のキリスト者として召されたわたしたちは、天に国籍を持つ主の民としてこの国に遣わされている(二二頁)ことを忘れずに、十四人と共にこの日本という国に向き合ってゆきたいと願わされます。