ブック・レビュー 花の写真と雑記帳世界に一冊の〝私だけの本”

 『「はな」生き生きと  』
辻本 睦恵
日本福音キリスト教会連合 松見ヶ丘キリスト教会牧師夫人

前任の教会で、牧師館前の道路に面した土手を、花や緑でいっぱいにしたくて草取りをしていると、必ず「精が出ますね」と声をかけてくださる方がいた。とっても気難しそうに見えるおじさんなのにやさしい笑顔で。向かいの畑の奥さんは、「これを植えたら」と花の苗や球根を季節ごとにくださった。その土手に花が増えていくと、坂道を上がってきて「お花を見るのが楽しみです。ありがとう」と声をかけてくださる方も多かった。花の真ん中に教会の集会の案内を掲げ、声をかけてくださる方にはその案内をすることができた。花を美しいと思う心が通じ合うとき、ことば以上の力が花にはあることをいつも感じていた―。
そんなことをこの本を見ていて、なぜか懐かしく思い出しました。
本を開いていくと、花の写真やイラストやみことばだけでなく、メモ欄のような空白の部分がありました。はじめに「my雑記帳の使い方ガイド」が紹介されていることに全く気づかず、そのことに少し違和感を感じながらも、花を愛して育て、その花を生かして生け、美しく写真やイラストに収める、それを作者が全部一人でされていることに驚き、感激しながら見ていました。
毎日の生活の中で、小さい庭や畑の世話に手を焼いている私は、植物を愛し、育て、ともに生きて行くことの楽しさを再確認させられる思いをもって、一つひとつの作品を興味深く見たあと、やっとこの本が〝my雑記帳〟として作られていることに気づきました。
たとえばその空白のページを、「うれしかった、悲しかったことmemo」に使ってみては、との提案に、もう十年以上も前に、母の遺品の中にあった日記ともいえないような、家族の大切な出来事をただメモ書きしたようなノートのことを思い出しました。きょうだいで涙してそのノートを見たことを。この雑記帳が世界でたった一冊の大切な思い出になるような、そんな使い方ができればどんなに素晴らしいだろうと思いました。花の持つ力に、使う人の愛が加わって、この雑記帳が様々に用いられますように。