ブック・レビュー 『聖書流ストレス対処法』

『聖書流ストレス対処法』
山口勝政
日本福音キリスト教会連合・八郷キリスト教会牧師

ストレス科学の知見や認知療法的手法を用いながら、聖書的に問題解決の方法を説明

 私たちの人生には、子どもの自立、定年退職等、あらかじめ予測される出来事はもちろんのこと、これ以外に思いも寄らない時に、思わぬ出来事が発生しますので、誰でもその新しい環境に上手に適応し、それを乗り越えることが求められます。その対応を誤りますと、病気になったり、心の病にかかることになります。一般信徒はもちろんですが、特に牧会者は教会員、外来者の相談、それに自分自身の家庭と職場環境などにより、ストレス指数は高いと言えます。牧会を離れ無任所になる牧師の増加も報告されています。

 私もこうした教職者の相談に乗ることがありますが、相談できる人はまだ良いほうで、実際相談する人がなかなか見当たらなかったり、プライバシーが露見するのを恥じて相談することをためらったり、特に顔見知りの仲間には相談できないために、一人悶々として回復を長引かせている方々もおられます。ですからこうした方々を援助するには、一般の方々にも言えることですが、職場内の経験者よりは第三者的な専門家のほうが相談しやすいと言えるでしょう。

 著者ホッチキス師は長年牧師、宣教師、牧会カウンセラーとして経験を積んだ練達したカウンセラーです。こうした経験の中から一般信徒、教職者に語りかけたのが本書です。本書はストレス科学の知見や認知療法的手法を用いながら、聖書的に問題解決の方法を分かりやすく説明しています。信徒はもちろん教職者も教えられるところが多い書です。

 聖書からのみことばも多く引用されていますが、継ぎはぎ的な引用ではなく、適切で、正統的な聖書解釈に基づいており、しかも科学的知見にも根拠を置いていることを示しています。とりわけ自己神化の問題と、その解決としての神の主権を認める神礼拝を指摘している点は重要で(七二頁)、多くの現代精神科医が重要問題として指摘している点です。信徒にも、教職にも心から一読をお薦めします。