ブック・レビュー 『わてらやりまっせ!』
身体障害者と共に歩んだ30年

『わてらやりまっせ!』身体障害者と共に歩んだ30年
手束 正昭
日本基督教団 高砂教会牧師

教会形成と成長の原理を楽しくほのぼのと教えてくれる

 著者の山中一正師は淀川栄光教会の牧師であるとともに、NPO法人アビリティーおおさかの代表を務めている。このNPO法人は、以前は身体障害者自立協会といい、文字どおり身体障害者たちの自立を促し、進めていく社会福祉法人である。こう言うと、ほとんどすべての人たちは淀川栄光教会という普通の教会を牧会しながら、かたわら社会福祉事業に取組んでいる牧師、というふうに想像するであろう。そしてこのような“二足のワラジ”をはいている牧師は、少なからず日本にも存在する。

 ところが、山中牧師の場合はそうではない。“二足のワラジ”のはずが“一足のワラジ”になっているのである。すなわち、淀川栄光教会そのものが身体障害者自立のための施設であり、教会と身障者の施設が重なっているのである。つまり、教会員のほとんどが身障者とその自立を助ける人たちによって構成されているのである。これはすごい。私も多少なりとも、ほかの牧師より数多くの教会を見てきているという自負を持ってはいるが、このような教会の在り方は寡聞にして初めてである。どうして、こんな離れわざができたのか。本書はこのことの次第を証ししていく。

 成功する人生を築くためには、アイデンティティの確立が、人間にとって肝要であるように、教会にとっても不可欠である。どの教会にも、それぞれ神から託された使命と目的がある。牧師は祈りのうちに自らの教会のアイデンティティを神から聴いて確立しなくてはならない。私はこのことこそ、教会の形成と成長のもっとも重要な原理だと考えている。

 山中牧師はこの原理にしっかりと立った。そして身障者の教会をつくることこそ、神から託された自らの教会の使命であることを、祈りの内に確認したのである。かくて神はあふれる祝福を山中師と教会の上に注いだのである。本書は教会の形成と成長のもっとも大事な原理を、おもしろくほのぼのと教えてくれている。