ビデオ 試写室◆ ビデオ評 86 「おめでとうイエスさま」

「おめでとうイエスさま」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

柳川茂、河井ノア、黒柳徹子が贈る降誕アニメファンタジー

 ストーリーはすっかり覚えていても、限りなく何度見ても面白いもの、感動するものがあります。一度三谷幸喜の『HR』というコメディのDVDを借りてきたら、家族中がくりかえしくりかえし見て笑っているのです。もうギャグなど暗記するほど覚えてしまっても、「まだ見たいから返すな」と言います。何度見ても感動する『エデンの東』のような映画もあります。結末がわかっていても、涙が出ます。

 また、古い映画やドラマが、次々にリメイクされています。以前ここで紹介した『十戒』や『クオ・ヴァディス』もそうですし、テレビでは『白い巨塔』や『赤い運命』などが新しいバージョンで登場しました。こういうリメイク版の場合は、「今度はどんな脚本で、どんな演出で、どこに強調点を置いて、どんな風に演じられるんだろう?」という興味が堪えません。ストーリーは全部知っていても夢中で見ます。古典落語などもそうです。

 しかし、イエス・キリストの生涯ほど無数の作品が作られ、なお作られ続けているものはないでしょう。遠藤周作氏によると、イエスの生涯が、すべての感動的な物語の原型になっているそうです。その中でも最もよく知られているのは、降誕物語です。

 『おめでとうイエスさま』は、もうみんな知ってるイエス様の誕生物語です。それで「今度は誰が作ったの?どんな絵なの?演出は?強調点は?」そんな好奇心を持ちながら見てみました。

 まず、日本人による作品であること。脚本が柳川茂、キャラクター・デザインが河井ノアという、タツノコ・プロ出身のゴールデン・カップル。河井ノアさんは、「タツノコ・メルヘン」の作品を任されていたキャラクター・デザイナーで、童話的でファンタジックな、かわいく美しい絵で定評があります。ジャケットを見ても、暗い馬小屋が宮殿か天国のようにオーラを放っています。その夫柳川さんの脚本は、日本人の心に合う優しさに満ちています。アメリカの作品にはとかく残酷な描写がありがちですが、安心した気持ちにさせてくれます。

 ナレーターの黒柳徹子さんは、1965年からユニセフの親善大使として、各国の飢え、傷つく子供たちのために、身を削って働いてこられました。ナレーションの声の中に、これを見るであろう子供たちの幸せを願う思いが込められているような気がします。

 この作品の強調点はというと、終わりの方のナレーション。「なんと素晴らしいことでしょう!救い主がお生まれになったのは、立派な宮殿ではなく、誰でもお会いできる馬小屋だったのです」。イエス様は、だれでもお会いできるところに、いつもいてくれるのですね。弱い者、貧しい者、そして罪深い者とともに。

 また日本語、英語、日本語字幕、英語字幕を自由に選べ、降誕の場面を英語のレッスンとしても大いに役立つ作品です。