ブック・レビュー 『クリストファーの冒険』
動物たちの天路歴程

『クリストファーの冒険』動物たちの天路歴程
澤谷由美子
日本キリスト改革派 湖北台教会員
「おはなしのへや」主宰者

天国へ向かうクリスチャンの人生を動物たちで描く

 クリスチャンの人生は、天国に向かう冒険の旅です。このたび、それを動物たちに置き換えて、かわいい絵で描かれた『クリストファーの冒険 動物たちの天路歴程』が出版されました。

 ネズミのクリストファーは、滅びてしまう〈暗黒の森〉を脱出して、〈みどりの森〉へ向かう旅に出ました。家族も友だちもだれひとりついて来ませんでした。嘆く彼の背中に大きな重い荷物がのしかかりました。これは、罪の象徴です。

 旅の途中、さまざまな動物たちが登場します。「ガンコ」や「ウツリギ」という名のウサギ。〈知ったかぶり町〉のヒキガエル。彼らにまどわされたり、だまされて道をまちがえたりするところも、私たちが陥りやすい失敗を示唆しています。やっとのこと〈せまい門〉に入り、〈いのちの水〉を飲みます。そして、道の頂上で待っていた真っ白い羊に出会った時、彼を死ぬほど悩ませていたあの重い背中の荷物がすべり落ちてしまったのです。

 その後も、〈みどりの森〉を知っている動物たちに助けられてはまた失敗をするクリストファーに、ハラハラドキドキさせられます。〈暗やみの谷〉で、大きなヤマネコと正面から対決するところは圧巻です。

 そんなに勇気をふりしぼって勝利をおさめてからも、また自信をなくし、楽な道を選んでしまうところが私たちとよく似ています。恐ろしいキツネの巣穴に閉じ込められて絶望したとき、よい相棒のヒースリーが地面を掘り出し、二匹は懸命に掘り進んで〈みどりの森〉の入り口にたどり着いたのでした。信仰の友の大切さも教えられます。

 大人も子どもも十分に楽しんで読むことができる一冊です。小学校低学年の子どもたちには、教会や家庭で大人が声を出して読んであげたらよいでしょう。テレビゲームとは、まったく違ったおもしろさと、人と人が共に生きてゆく人生が神の国に向かう冒険であるということを共有できるでしょう。