書評books 在宅医療専門医からの呼びかけ

『「老衰」を生きる    教会と家族が守る高齢者の今と未来』

『「老衰」を生きる 教会と家族が守る高齢者の今と未来』
森清著
B6判
定価990円(税込)
いのちのことば社

順天堂大学名誉教授(衛生学) 稲葉裕

 
 「老衰の時代」―いろいろな表現があります。少子高齢化、少産多死、老年人口が増加、「老衰(加齢による身体機能の衰え、知力や感性の衰え)」が死因の上位を占める時代、それが今私たちの生きている時代です。日本は世界の中でも、かなり早くからこの時代に突入しています。さらに日本の中でもキリスト教界はいち早くその体験を先取りしてきたグループだということを、この本から教えられます。
 森医師は早くからご自分の専門を在宅医療に定め、キリスト者としてこのテーマに取り組んでこられています。最近、実のお母さまが九十二歳で天に召され、その体験(本書の序文に詳しく述べられています)を通して、改めて日本のキリスト教界に「老衰の時代に生きる」使命を果たすようにと呼びかけてくれました。
 老衰は、人間である以上避けることはできず、決して望ましいものではありません。しかし、そこに深い意味、創造主のご計画があることを聖書は教えてくれています。教会はそのことを知っており、老衰に伴って起こる問題やそれに対処するやり方も数多く体験しているはずです。
 欧米ではキリスト教がコミュニティに浸透して、教会と地域住民の協力によるさまざまな活動がなされていますが、日本ではまだまだの気がします。この本で森医師が在宅医療専門医としての豊富な体験から書かれた「老衰、認知症、グリーフケア、おかね、家族レジリエンス、人生会議」のそれぞれの具体的事例について、教会や地域でもっと語り合うことができれば、老衰の時代を生きる私たちの社会が、より豊かな実を結ぶことになるという希望を感じさせてくれます。
ぜひご一読をお勧めします。