特集 創刊九〇〇号のキリスト教誌を語る― 「百万人の福音」と私 自由で贅沢な場を与えられて

一九五四年創刊のキリスト教誌「百万人の福音」は、この7・8月合併号で創刊九〇〇号となる。長年本誌を支えてきた愛読者、また執筆陣に、読み手と書き手の立場から「百万人の福音」を通して得た恵みを語っていただく。

 

和紙ちぎり絵作家 森住ゆき

 

 結婚してまもない頃「こんなのやっている、応募してみたら」と夫が見せてくれたのが、いのちのことば社出版部&雑誌部主催イラストブックカバーコンクールの公募記事。それが月刊「百万人の福音」との出合いでした。
 独身時代に自己流で始めていた和紙ちぎり絵は、地元新聞社や広告代理店等から仕事をいただくようになって いました。しかし、クリスチャン男性との出会いがきっかけで自分も信仰を持つに至り、その人と結婚。相手の勤務先のある県外に転居したことで、従前の受注形態が物理的に難しくなり(ネットインフラの普及前でした)、また信仰者としての制作のありようを模索していた時でした。
 応募作品「クリスマス・キャロリング」は幸いにも優秀賞を頂戴しました。ほぼ同じ時期に、証し作品懸賞公募「ペンライト賞」に自らの救いの経緯を書いて送り、そちらも佳作に拾っていただきました。そしてイラストの応募作品が一九八八年十二月号に表紙画として掲載され、その後正式に表紙制作のお話をいただいて、一九八九年と一九九五年から各二年間、作品をお届けさせていただきました。
 最初のうちこそ編集部にラフ画や色彩プランを確認してもらっていましたがいつしか「放牧」となり、ぽっと出の作り手の私に、とんでもなく自由で贅沢な発表の場をお与えくださった神さまと編集部にはただ感謝しかありません。掲載誌の巻頭には、同じ教会に集う星野富弘さんの詩画が力強く掲げられていたことは大きな励ましでした。
 さらに「ペンライト賞」の応募作を連載用に書き直し、後に書籍『アメイジング・グレイス』(一九九二年初版)として刊行していただけた恵みも忘れ難いです。私はキリスト教とは無縁に育ち、宗教への偏見と疑義と強い拒否感を抱いて若い日を歩みました。それはごく一般的な日本人の心情であると思い、そのような方たちにも届くように、との一心で書かせていただきました。
「百万人の福音」は、私の和紙ちぎり絵をめぐるささやかな働きの道を大きく拓いてくれました。そして私は今も、さまざまな記事から信仰の学びや励まし、日常の生活だけでは気づけないスケールの社会的課題や問いかけを受け取り続けています。