書評books 「逆視点の辞典」から教えられる恵み

単立・岐阜純福音教会主任牧師 小山 健

 

『悪魔の辞典 逆視点からの信仰の学び』

水谷潔 著
B6判・128頁
定価1,430円(税込)
いのちのことば社

 

皆さんはお城が好きでしょうか? 良いお城を築く「名築城家」は「城攻めの名手」であると言われます。敵がどう攻撃するかを知るからこそ、良いお城を築くことができるのです。信仰生活に適用するなら、悪魔がどのように攻撃してくるかをよく知ることは、私たちが信仰を築き上げる上で大切なことです。水谷潔先生が『悪魔の辞典』を書かれたのは、まさにこの逆視点から教えられる恵みです。
辞典と聞くと「分厚く、字が小さく、難しい」イメージをもちやすいですが、『悪魔の辞典』は薄く、字は大きく、わかりやすい内容です。辞書スタイルで、一つの語句が一ページごとにまとめられ、最初に悪魔視点の語句の解説、続けて悪魔への反論「牧師のダメ出し」、最後にみことばが記されています。
たとえば「あるがまま」の項で、悪魔は「あるがままで愛されているのだから、変えられて成長する必要はないんだよ」と語ります。一方、牧師は「あるがままで愛された者が、そのままに留まらず、変えられ成長することは聖書が明記する神のみこころ」と反論します。私たちの存在が「あるがまま」で神様から愛されているのは確かですが、近年、罪を悔い改めず「そのまま」でいてもよいような風潮があることも事実です。悪魔の視点から書かれているからこそ、神の愛に応答して歩む大切さを改めて教えられます。
悪魔のコメントは皮肉に満ちています。「信仰継承」を悪魔は「親が子どもに、自らの価値観を押しつけ、強制力をもって、子どもをクリスチャンにすること」と語ります。
一方、牧師は「ことばと生活を通して信仰の証しをし、子どもを愛し、対話し……子どもが神に出会う助けをしていくこと」と反論します。子どもたちは、親心が行き過ぎて陥りやすい親の行動がわかり、一方、親は子育てで気をつけるべきことをドキっと教えられます。
家族やユースグループで一ページごとにディスカッションして読むことも、お薦めできるこの本の楽しい読み方です。