日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会 主任牧師　西村敬憲

『聖霊を知る喜び
満たされ、導かれ、実を結ぶために』
朴永基 著
A５判・定価2,420円（税込）
いのちのことば社

教会の現場では、「聖霊」をどのように理解し共有していくのかは大切なことですが、さまざまな立場や運動があり、取り組むきっかけをつかめないままでいることが多いと思います。本書は、そのような課題に長い時間をかけて格闘してきた著者と教会の人たちによって分かち合われた「聖霊を知る喜び」を私たちに確実に届けるものです。
目次を見ると「聖霊の内住と聖霊の証印」「真理の御霊と注ぎの油」「聖霊の導き」など、教理的アプローチではなく、聖霊と共に生きることを著者が考え抜いて選んでいることが分かります。
まず驚いたのは、その構成です。考え抜かれた見出しごとに、本文を極力そぎ落とし、聖句本文がふんだんに並べられています。この構成こそが著者の教会形成の現場で培われてきた確信を表すものかと思います。つまり聖書のことばの力を信じて読むこと、それこそが聖霊の声に聴く信仰者の営みだということです。聖句をたどっていくと、あらためて気づかされたり、今の自分の課題への語りかけにもなったりという経験の繰り返しでした。
全体の流れは、聖霊の位置づけからはじまり、聖霊の賜物や導きといった聖霊と共に生きることへと進み、最後は「よりすぐれた賜物」として「愛」について深く語られています。「愛は理論ではなく、実生活です」（一七五頁）ということばに一つの焦点を見ることができると思います。
また、本文の選び抜かれたことばにも圧倒されます。特に第４課「御霊の実」には息をのみました。「平安（eriene）は、互いに一つになることです」（一四一頁）、「善意（agathosne）は、良いものを互いに分け合うことです」（一四四頁）。
聖句は読み飛ばさないことをお勧めします。親しんできたものばかりなので、それこそ聖霊が語りかけてくださり、抱えている課題に光を与えられる経験に導かれるでしょう。
最後に天使とサタンの課が加えられていますが、これだけでも本棚に置く価値があるものです。
今後、教会論をはじめ、著者が積み上げてきたテキストのシリーズ化を切望します。