書評books 社会をていねいに編みなおし、すべての人が豊かに生きるために
『ポンコツでいこう 反開発主義による社会の再生産』
桜井智恵子 著
B6判
定価1,540円(税込)
いのちのことば社
自由学園学園長 更科 幸一
桜井智恵子さんの『ポンコツでいこう』には、これまで気づかなかったものがゆっくり姿をあらわしてきて、「あ、こういうことだったんだな」と大切なことが見えてきて、社会は変えられるという前向きな気持ちが生まれてきます。
いまの社会は「成長しなきゃ」「発展しなきゃ」という流れが強く、開発主義の価値観が私たちの暮らしの奥まで入り込んでいます。能力を上げて競争に挑み、自分で幸せをつかむことが当然のように語られる中で、お金や評価にしばられて生きづらさを抱えることもあります。
みなさんはどうですか。
「もっと頑張らなきゃ」「足りていないのは自分かもしれない」と感じてしまう時はありませんか。
日本では毎年二万人以上の方が、生きづらさの中で自ら命を手放さなくてはならないところまで追い込まれています。一人で抱え込まざるを得ない社会の現実は、胸が締めつけられます。
私自身も、子どもたちとともに「平和を願うだけじゃなく実現する人でいたいね」と生活をしながら、自分の中で道が見えなくなることがあります。そんなとき、『ポンコツでいこう』の言葉は、迷った時に立ち返ることのできる聖書のような存在として、静かに支えてくれます。
この本には、「社会の当たり前は信じきらなくても大丈夫だよ」と、深く問いを投げかけてくれるまなざしがあります。小さな問いを立てることで、心に沈んでいたモヤモヤが輪郭を持ちはじめます。
そして、この本の根には聖書の視点が息づいています。神さまの被造物として、一人ひとりをそのまま見つめるまなざし。「そこにいるだけで大切な存在である」という力強いメッセージがあります。
『ポンコツでいこう』は、社会をていねいに編みなおし、すべての人が豊かに生きるために、私たちがどのように考えるのかをわかりやすく示してくれる本です。智恵子さんありがとう! この本を通して、神の国を本気で創造していく仲間たちと歩めることに心から感謝します。