書評books 苦難の実りとして育まれる「神を恐れる正直な心」

苦難はあっても絶望はない  伝道者キム・サンボク不屈の源泉 表紙

『苦難はあっても絶望はない  伝道者キム・サンボク不屈の源泉』
金 相福 著 廉 成俊訳
四六判・240頁
定価1,980円(税込)
いのちのことば社

日本同盟基督教団 招待キリスト教会 牧師 趙 南洙(チョ ナムス)

 使徒パウロの書簡は、各信仰共同体が置かれた現実(コンテキスト)に対し、神のことば(テキスト)をもって語るメッセージです。ゆえに説教者は、まず聴き手の状況を正しく理解し、そのうえで神のことばを正確に解き明かす務めを負っています。
 韓国ハレルヤ教会で長年牧会された金相福先生は、引退後も後任者の着任までにしばらく説教の責任を担われました。去りゆく説教者として何を語るべきかを祈り求める中で、試練の中にある会衆に向けて「苦難の神学」をやさしく、しかし深く説かれました。その説教がまとめられたのが『苦難はあっても絶望はない』という書物です。
 先生は序文で、「この世に生まれたすべての人が避けられない共通点は『試練と苦痛』である」と語り、それすらも神の御心の中にあると教えています。穏やかな笑顔で知られる先生ですが、主を信じるゆえに多くの苦しみを経験され、その体験を通して神のことばの真実を力強く証ししておられます。
 戦前の平壌で神社参拝を拒否して殉教した朱基徹牧師の教会で養われ、信仰を貫いたため小学生の頃からいじめを受けた逸話からも、主の真実がうかがえます。
 本書では、苦難を「人生の方向を変える神の逆風」「私たちを鍛える愛の手」「罪を省みる機会」として語り、さらに苦難が人をへりくだらせ、聖霊の油を注ぎ、弱さの中にこそ恵みがあることを示しています。また、苦難は霊的戦場であり、神は子どもの叫びに確かに耳を傾けておられると慰めます。
 そして苦難の実りとして、忍耐を完成させ、善を行い、誤った優先順位を正し、何よりも「神を恐れる正直な心」を育むと語ります。やがてその苦難は、他者を慰める涙となり、平安をもたらす祈りへと変えられる――それが本書の核心です。
 敬愛する金相福先生の数ある著作の中で、第四冊目となる日本語訳『苦難はあっても絶望はない』をご紹介できることを、心から光栄に思います。