さわりよみプラス 名画を彩る 最終回 今月のお題 「羊飼いの礼拝」

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
1644-47年/ルーヴル美術館/パリ(フランス)/油彩、画布
/107×131cm

 

イエスの誕生を最初に知らされたのは、エルサレムの南に位置するダビデの出身地ベツレヘムの郊外で野宿していた羊飼いたちでした。羊飼いの仕事は社会的には貧しく、また当時の宗教的な人々からは軽蔑されるような立場でした。
この名も無き羊飼いこそ、イエスの誕生を最初に発見する証人となりました。
(中略)
身重になっていたマリアと夫ヨセフは、住民登録のために、自分たちの住んでいたナザレから本籍のあるベツレヘムまで旅をして、そこの宿に泊まるつもりでしたが、宿がいっぱいのため、しかたなく家畜のいる洞窟で休むことになりました。
イエスはこの世の最も卑しいところ、暗闇が支配しているところでお生まれになりました。しかし、かえって、そのことが羊飼いたちに発見されるしるしとなったのです。羊飼いたちは、この幼子こそ神がこの世に遣わされた救い主であることを信じることができ、心からの礼拝を献げました。
ラ・トゥールは、生まれたイエスを中心にして、そのまわりに秩序正しくマリア、ヨセフ、そして羊飼いたちを配し、礼拝されるべき対象を明確に描いています。また、ロウソクの光がイエスに当たって、イエス自身がまるで光源のように描かれ、この方こそ、世の人々を照らすまことの救い主であることを宣言しています。
(『巨匠が描いた聖書』から抜粋)