特集 災害に教会はどう備えるか 「キリストさん」になるために 教会の備えと心構え

南輝・広江聖約キリスト教会 牧師 吉岡 創

「友はどんなときにも愛するもの。兄弟は苦難を分け合うために生まれる。」(箴言一七・一七)
五年前まで「晴れの国」岡山では、「災害が起こらない」と思っていました。近年大きな災害がなく、瀬戸内の温暖な気候がそんな錯覚を与えていたのでしょう。災害支援についても「岡山から支援に行く」ことだけを考えており、支援を受ける側になることを想定していませんでした。
ですから、岡山を中心に教会形成を行ってきた聖約教団には、他の地域で起こった災害を支援する委員会はあったものの、いざ地元で災害が起こった時の対処法(例えば支援拠点の選定、ボランティアセンターの立ち上げ等)が欠落していました。
そのため、二〇一八年の西日本豪雨発災当日、いち早く支援に動いた教会があったものの、教団としては三日後に日本国際飢餓対策機構との災害支援委員会を行い、結果的にそれが呼び水となって、一週間後の「岡山キリスト災害支援室」(岡キ災)発足となりました。当時「迅速な立ち上げ」との評価をいただきましたが、すでに七日が経過していました。

ともに立ってくださった海外そして国内の支援団体、そして県内の諸教会と諸団体には感謝のことばしかありません。しかし発足に時間を要したことを振り返るとき、やはり「発災前に準備がなされていること」が大切だと思わされています。
神様はこのような足りなさも用いてくださり、その後の活動を祝福してくださいました(詳しくは岡キ災の「活動記録集」をご覧ください)。これらの背後には、災害支援の経験を持つ諸団体からの適切なアドバイスと支えがありました。
現場だけを注視すると視野が狭くなりますが、諸団体の経験に基づいたアドバイスは視野を広げ、私たちを健全な状況判断へと導いてくれました。
苦労はありましたが、一人も「燃え尽きてしまう人」を出すことなく活動を継続できたことは幸いでした。
平時において、私たちができる備えがあると思います。
①ハザードマップを理解すること。発災時にまず、家族とまわりの人たちの安全を確保し、いのちを守ることが大切です。
②備蓄を工夫すること。個人が大量の備蓄を行うことはできません。しかし各自がある程度の備蓄を行い、発災後すぐに必要となるものを多めに用意しておくことが、初期の支援に繋がります。たとえば雑巾等の掃除道具、おむつ等の衛生用品、新品の下着等です。
③教会として準備できること。私の場合、支援とともに教会活動を維持することがとても大変でした。その時、礼拝における説教支援をしてくださった神学校の教師がおられ、本当に助かりました。また毎週、合同祈祷会が行われ、励ましと力になりました。その他、ボランティアへの炊き出しや宿舎の掃除等、教会のニーズに応える支援体制を整えておくことも良き備えとなります。
また現場を体験しておくことは、とても重要なことです。当教会の場合、災害前に中心的な人たちが阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震における活動を経験しており、被災地で起こる出来事をリアルにイメージできたことが教会にとって大きな助けとなりました。毎年のように発生する災害に教会として関わり、現場を体験しておくことがじつは良き備えとなるのです。

心構えについて書かせていただきます。まず日頃から地域の牧師たちがお互いを知っておくことは有意義です。いざという時、ひとりでできることは限られています。すぐに携帯やSNSで連絡を取り、チームで働くことのできる関係性が重要です。
そして発災時には、個々で情報を取りに行くことは控えていただきたいです。現在は「キリスト全国災害ネット」(全キ災)等、情報のとりまとめを行う団体がありますので、そこからの情報を待っていただきたいです。そうでないと当事者が電話やメールの対応に追われ、疲弊してしまいます。
また現場では寛容さが大切です。当事者が丁寧に対応できない状況やボランティアの冗談が通じない場面もあります。せかさず、優しく接していただければ幸いです。また提案よりも、現場の指示を忠実にこなしていただきたいです。本当に必要なことは、だんだんと見えてきます。タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスだけに思いを向けないでいただきたいです。支援には「無駄」と思われることも含まれているのですから。

最後に、教会が仲良く支援する姿が何よりもの証しです。被災地には異端の働きも散見されますが、被災者たちは本質をよく見ています。そして気がつけば、ボランティアの人たちが「キリストさん」と呼ばれるようになるのです。
ただ神様に栄光がありますように!

 

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