346 時代を見る眼 信仰継承と宗教2世〔1〕強制ではない信仰継承

日本メノナイトブレザレン教団
石橋キリスト教会 牧師
船橋誠

2022年7月の安倍元首相銃撃事件という衝撃的な出来事を発端に、政治家への献金疑惑や選挙協力など、旧統一協会が行ってきた政治関与や影響が明るみに出ました。同団体の資金源が大勢の信者からのものであり、中には財産すべてを売り、借金をして献金をした人たちがいて、それにより家庭崩壊が起こるなどの被害実態が報道され、社会を驚かせました。
これらの問題は、私たちキリスト者にとって社会で起こったひとつのニュースとして、傍観できるものではありません。「教会」や「献金」、「祝福」といった語が、これらの報道で語られる時、非常にネガティブなものとして人々の耳に残ってしまいました。長いコロナ禍で活動制限のあった教会の宣教にとって、さらなるダメージとなったように感じます。一連の報道から、かつてのオウム事件と同様に、「やはり宗教って怖い」というマイナスな印象を人々に与えました。
しかしこうした状況に悲しんだり、落胆したりしてばかりもいられません。むしろ教会として考えるべきこと、向き合うべきことが、浮かび上がってきたと思います。特に、「宗教2世」という言葉が世間一般で注目される昨今、私たちが以前から大切な使命として取り組んできた「次世代への信仰継承」について、あらためて考える必要が求められているように思います。
旧統一協会ばかりではなく、他の宗教団体においても、信仰を親から厳しく強制されて、心に大きな傷を負った元信者たちがいます。その脱会者の証言ビデオを見て、彼らが強引な教義の押し付けや洗脳、自由な意志の剥奪、脅迫に近い圧迫を受けた痛ましい事実を知り、悲しく残念に思いました。
そして同時に思ったことは、拠って立つ真理が正しいかどうかということは別にしても、私たち教会は健全なかたちで、次世代に対して福音の真理と信仰を伝えきれているのか、ということです。また他方で、「宗教2世」の被害者の声を知って、気持ちが萎縮し、子どもに信仰を伝えることをためらったり、あきらめたりする方向に進まないように注意しなくてはならないとも思いました。
「私たちは 息子たちに隠さず/後の時代に語り告げよう」(詩篇78・4)という正しい姿勢や熱心さを決して失ってはならないのです。強制でも押し付けでもなく、対話をもって創造的に真理を教える道を、私たちは持っているはずなのですから。