書評Books 神様が存在自体を愛している躁うつ病当事者から見える世界

イラストレーター みなみななみ

『雨の日も晴れの日も
私の躁うつ病日記』
内田道代 漫画・文
芳賀真理子 解説
A5判・定価1,980円(税込)
フォレストブックス

 

おもしろかった。一気に読んでしまった。いやいや、現実は、躁うつ病の過酷な症状、希死念慮、奇行に振り回される家族と友人。当事者にとっておもしろいなんて、とんでもない……のだが、絵は素人という、道代さんの描くシンプルな線画と自分を客観視した文章には、ユーモアがあふれている。
何より、どんな時も彼女を神様が、がっつり愛しているということが、本全体から感じられる。なので、大変な体験談でも、なんだか楽しく読めてしまうのだ。
躁状態とうつ状態の対比は、興味深かった。神様が感じられる! 献身的な信仰、すべての人に愛を感じ、やる気と喜びにあふれる「躁状態」。私は、「え! それって、いいよね! むしろそこを目指したい!」と思ったのだが、読み進めると、そうとも言えないことがわかってくる。一方で、うつ状態は、生産性のない自分をダメだと思い、神様を感じられない。「え、これって……けっこう自分じゃん」と思った私。うつ状態の道代さんに共感するところが多かった。世の中の役に立つことは何もなくても、「猫と一緒に寝るのが仕事」……自分だよ。ひどいうつで何もできなかった時、道代さんが「神様 こんなんでもええというてくださるか」とつぶやく場面がある。その神様からの答えは、直接聞こえてはこない。けれど、本全体から感じられた。「こんなんでもええ」と神様が言ってくださっている。何かができるから、生産性があるからでなく、道代さんの存在そのものを、愛おしく、大切に思っているということ。道代さんのまわりにいる人たちの愛情に満ちた言動の数々を通して、神様の愛が伝わってきた。涙が出てきた。そして心がぽかぽか温かくなった。
途中に入る「拙者先生」こと芳賀真理子先生とのやりとりは、大波に揺れる小舟を引き止める碇のように、本全体に安定感を与えてくれる。医療現場にいる専門家の解説で冷静でかつわかりやすい。
枯山水と紅葉と比叡山(京都)を描いた一コマは、私のお気に入りの一コマ。ぜひご一読を。