書評Books 被造物の共同体という大きなビジョン

日本同盟基督教団・国立キリスト教会牧師/聖書的環境コンソーシアム代表 小川真

 

『聖書とエコロジー
創られたものすべての共同体を再発見する』
リチャード・ボウカム 著
山口希生 訳
四六判・2,420円(税込)
いのちのことば社

「地球環境問題」「SDGs」「エコロジー」といったフレーズを聞く機会が多くなっています。環境問題についての一般書は多く出されていますが、聖書の視点に立って被造物ケアを論じている書物はいまだ少ないのが現状です。今回、待望の書、聖書神学者リチャード・ボウカム氏の『聖書とエコロジー』が邦訳出版されたのは大変喜ばしいことです。

ボウカム氏は、本書でこのように語ります。「人間と他の被造物との関係についての最近の多くの考察は、『スチュワードシップ(受託者責任)』という概念に焦点を合わせています。私はこの概念を、人間が他の被造物を誠実に世話をするという天来の使命であると定義しています。」続けてこう指摘します。「しかしこの関係を正しく理解するためには、被造物の共同体という、より大きなビジョンの中で考える必要があるでしょう。私たちは、人間が他の被造物とは仲間同士であるという聖書的な感覚をもっと深く認識する必要があります」(本文四頁)。これは、ともすると被造物が有用であるかどうかだけで必要性を判断しやすい私たちに鋭く迫る指摘です。

またボウカム氏は、人に脅威を与える野生動物と人間世界との和解を「エコトピア的未来」(二四九頁)と呼びます。荒野で誘惑を受けたイエスが野の獣とともにいたことに注目してこう言います。「野の獣とともにいるイエスのイメージは、人間が他の被造物と兄弟として生きる可能性を示す聖書的なシンボルなのです」(二五七~二五八頁)。それが完成するのは終末的な未来においてですが、野生動物の棲家を奪い続けている現代において、野生動物を尊重し、彼らの生息地を保存することの意味づけを与えていることに大きな意義を感じます。

本書を読むとき、被造物を慈しんでおられる神のまなざしが私たちに与えられます。また、この被造世界を造られた主への賛美に導かれます。ぜひ本書を、個人で、また教会の読書会や有志の学び会などで読んでいただければと願います。