書評Books 流れ始めた“神の祝福”―被災地・福島から

相模原牧師会・災害支援「ミッションみちのく」代表 阿部信夫

『フクシマから 福島への道」
福島県キリスト教連絡会 編
A5判・定価1,980円(税込)
いのちのことば社

〝うつくしま”と、福島の皆さんは、誇りをもって故郷を呼んでいます。裏磐梯の五色沼はその代表でしょう。しかしその景勝は、今から百三十四年前の磐梯山の大噴火で、川がせき止められてできたものです。被災地なのです。しかしそこから再生している。片や太平洋に面した東京電力福島第一原発は、百年後どうなっているでしょう? これが自然災害と人災の違いです。そのゆえに、福島の皆さんは、これからも苦しみ続けなければならないのです。けれども、その福島から〝神の祝福”が流れ始めています。まだ小さな流れですが。

この本は、東日本大震災から十一年、被災地・福島からの十九の証言です。

牧師、牧師夫人、主婦、看護師、児童養護施設のスタッフ、在住外国人のための働きをしている方等々、様々な働きをしている方々です。痛みの中から紡ぎ出された〝知恵の言葉”が、ここに記されています。その中の二つを紹介します。

①被災者支援のためにできた「ほっこりカフェ」は、自治会と社協が始めたもの。(牧師もその居心地の良さに癒やされた。)仮設閉鎖後は、それを教会に移して今も続け、十五、六名が参加し、フラや、刺繍のクラスを含めると、延べ四十~五十名が集い、その中から礼拝に参加する人が起こっている。地域に開かれた教会となれた。

②大震災から一年後、わずか五日間に、続けて三人の方が天に召された。閉鎖的な地域(世帯数百七十戸)で行われた初めてのキリスト教の葬儀の時、事前に地域のリーダーにキリスト教式の葬儀について説明し、地域の葬儀の互助システムでのお手伝いをお願いした。その結果、式後、「キリスト教はわかりやすくていい」とか、「これからはここでもキリスト教式が増えるかも」という声が聞かれた。《地域のニーズに応える教会》一パーセントの壁を破るのは、このへんにあるのかもしれない。
悲しみの中にも、こんな御業がなされているのです。ぜひご一読ください。