特集 子どもたちと楽しめる絵本 絵本を翻訳するうえで、大切にしたこと

執筆・翻訳家  山形優子フットマン

『おこりんぼうのヨナ』、『とってもうれしいイースター』は、作者ティム・ソーンボローさんの遊び心が満載されたユニークな絵本。この二冊の翻訳を手がけた際、心から願ったのは子どもたちが聖書の楽しさにワクワクしてくれたなら、ということ。

それはまた私自身、聖公会系の小学校低学年時代、話し上手の先生のおかげで「聖教」の時間が楽しみだったこと、福音の素晴らしさを理屈抜きで味わう恵みをいただいたからです。
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原作者ティムさんは、実に愉快で楽しい方です。彼と私は同じロンドン郊外ウィンブルドン、英国国教会エマニュエル教会のメンバーで、彼も私も元ジャーナリストだったという共通点もあります。

ティムさんは多才でヴァイオリンが上手、話術に長けていて、エマニュエル教会で開催している日本語礼拝「賛美の群れ」のスピーカーにお迎えしたり、彼の書き下ろしクリスマス人形劇を私が邦訳し、日本人の子どもたち向けパペット・ショーを披露するなど、楽しい企画を何度も、ご一緒させていただきました。

絵本を翻訳するうえで、難しかったのは、キリスト教が定着している英国の子どもたちには、すんなり理解できても、日本の子どもたちには、わかりにくい言葉が多かった点。ですから、意訳したり言葉を砕き軽く説明したりした部分もあります。

たとえば「同じ意味の異なる言葉」を探す「言葉遊び」からなる『おこりんぼうのヨナ』、英単語を右から左へ翻訳しても硬く難しいだけ。そこで日本語独特の擬音語を付け加えてみると日本語がイキイキと一人歩きした次第です。

一方、ティムさんは『とってもうれしいイースター』で、子どもたちが両親と一緒に思い思いの顔を作りながら、それに伴う感情表現が体験できる、言わば心理学のロール・プレイにも似た、参加型の読書時間を演出。

翻訳の際は、顔作りが感情作りに連動し、ストーリーと一致するプロセスを意識。否定的、肯定的な感情を含む人間の包括的感情表現はもとより、死さえも喜びに変える福音の素晴らしさ、その喜びが最高潮に達し、黙っていられず伝道へ……流れのある日本語を目指しましたが、はたしてどうでしょう。

聖書に忠実なティムさんの英文に、神様からいただいた私たちの日本語を精いっぱいすり合わせ、「愛の花束」として子どもたちへ贈れるのなら、翻訳者として本望です。数々の不足点は天からの恵みに補っていただこうと祈りながら。

 

今年一押しの新作 絵本 ~作者たちの声~

次はだれの手? ページをめくるのが楽しい絵本!


『だれのてこのて』 ホンダマモル 作
私はとても内気で怖がりな少年でした。そんな私でしたが幼い頃から教会に行き、イエスさまの存在を知っていたことは大きな慰めでした。暗い夜道を通る時も、友だちにいじめられてつらかった時も、失敗をして悲しかった時も、私にはイエスさまがいてくださる。それは何にも代えられない支えでした。
主が共におられる。絵本『だれのてこのて』が伝えているのは、このひとつのことです。この絵本を通してイエスさまが共にいてくださるという慰めを、ひとりでも多くの子どもたちに届けられるのなら、この上もない幸いです。

 

畑のレモンの木にバナナが実った!? 自分らしさを考える1冊


『ソロソロさんのレモンの木』 髙田未羽 文・山口新 絵
自分が好きになれない時、他の人がうらやましくなってしまう時、そんな時に読んでもらえたら嬉しいです。私自身、自分が好きになれず、神さまも周りの人も私を見放してしまうのでは、と思ってしまう時がありました。すっぱいレモンやあまいバナナ、神さまはそれぞれの実をよくご存じで、その上で必要とされているんだなと思います。
子どもたちが、ただ神さまを見つめて、安心して大きくなれますように、という気持ちでお話を作りました。

 

ストーリーはもちろん、めいろやクイズも楽しめる!


『めいとヨッシー』 きばやしあかね 作
この絵本は、聖書の中にある、迷子の羊のたとえ話を下敷きにしています。子どもの頃に日曜学校で聞いたこのお話は、私のお気に入りでした。失敗しても、一人ぼっちになっても、どんなときでも自分を愛してくださるイエス様。そんなイエス様の愛を絵本で伝えることが私の願いです。物語を読み、遊ぶように親子で楽しみながら、イエス様と出会える。それがこの絵本のねらいです

 

みんなが急ぐ先には何があるの? 大切なことを教えてくれる絵本


『あっ』 いおり 作
道徳の授業のような話し方では、子どもは集中できません。それをストーリーにするだけで、続きが気になるので、みんなじいっと聞き入ります。見ず知らずのオジサンの私の話は聞かなくても、話の中のかわいいキャラクターのセリフは、不思議と心に届くのです。「しめしめ、これはいい方法に気づいたぞ」と、教会で話をするたびに書き下ろした絵本や紙芝居たちは、気づけば50作以上ある模様。

 

リズミカルな言葉遊びが楽しい、新感覚のクリスマスストーリー


『はかせとコッペのたび』 しのはらかもめ 文・しんじはるか 絵
主人公のコッペは、不完全で未熟な小さなパン。どこか自分に似ているコッペたちを描いていく過程で、私たち自身も星に導かれ、荒野を旅するような感覚を味わいました。愉快な繰り返し音を読みながら、子どもも大人もコッペたちと一緒にイエス様に会いにいく旅を楽しんでもらえたら光栄です。クリスマス礼拝で突然降りてきたインスピレーションから生まれた絵本を無事に出版できたことを「パパン」に感謝します。