破壊的カルトから身を守るために 記事2

パスカル・ズィヴィー
マインド・コントロール研究所所長

破壊的カルトに狙われやすい状態とは

 破壊的カルトや詐欺のように、人が他人にコントロールされたり、感化されたという話などを聞くと、私たちは本能的にそういう被害者を敬遠しようとします。ほとんどの兵士が弾に当たるのは自分以外の者なのだ思いこんでいるように、多くの人は自分の心や思念が犯されることはないと信じているのです。そして、「ほかの人間は操作されても、自分に限ってそんなことはない」と断言するのです。

 普通の人は破壊的カルトに呑みこまれることはないという神話にもかかわらず、人はひとりのこらず破壊的カルトの心理操作に弱いものであることが、近年、明らかになってきました(注2)。

 人は誰でも長い人生の間にいつも元気であるわけではありません。自分のこと、家族のこと、社会のことなどで悩んだりするものです。場合によっては強い精神的動揺を伴うこともあります。心が混乱しているので、普通に判断できないことが多いのです。そのような時期を「転換期」といいます。転換期とは一つの「ターニングポイント──転換の岐点」です(表2参照)。その時の決断によって、その後の人生を良くも悪くもする可能性があります。

 破壊的カルトは人が転換期にいる時を一番ねらってきます。先に説明したように、人の心が揺れ動いている時なので、普通に物事を考えて判断できず、簡単に影響を受けて操られてしまうからです。

 転換期にいる時は、まず自分自身がそこにいるという認識が必要です。そして、自分を守るために注意を払っていなければなりません。この時期、大事なことを決める場合は、時間をかけ、よく確認したうえで決めるべきです。

破壊的カルトはどこで人を狙うのか

 多くの元メンバーの証言によると、破壊的カルトは「あらゆるところで」人を狙っています。例えば、ショッピングセンター、レストラン、地下鉄などの駅、仕事場、ファーストフード店、イベント会場、戸別訪問、通行中、公園、大学(キャンパス)、空港、講演会などです。

どのように自分を守るのか

 多くの人たちが、破壊的カルトについて何も知らないまま、何も確認しないまま入信しています。脱会したメンバーたちに聞くとみな、「このグループが具体的にどういう組織か、最初から知っていたら入らなかったでしょう」と言っています。また勧誘された時、最初に出会った人が優しくて、そのグループの目的が興味深いからと、すぐに入信してしまうケースも多いようです。

 そこで、自分を守るために大事なのは、入信を決める前に、時間をかけて充分にそのグループのことの情報を収集し、特徴を知ることです(表3参照)。

 そして次のことを身につける努力をしてください。
  • 破壊的カルトのマインド・コントロールのメカニズムを知る。
  • 知らない人からの電話や訪問に、簡単に応じない。
  • 知らない人に、住所や連絡先などを教えない。
  • 自分の価値観を育てる。
  • 自分の個性を大切にする。
  • 自分自身を見失わないようにする。
 もう一つ重要なのは「ノー」と言うことです。何かをしてもらったら、お返しをしようとするのが一般的ですが、この破壊的カルトの勧誘とマインド・コントロールに対しては、否定するための知識と精神力を身につけてください。

おわりに

 まだ、多くの日本人は破壊的カルトの危険性を理解していません。場合によってこのようなグループは「ただ、ちょっと変わった宗教というだけ」と思っている人もいます。しかし、これは大きな誤りです。破壊的カルトはとても危険ですし、個人や社会、国家に対して強力な破壊力、また腐敗させる力を持っています。だからこそ、最も賢明な対処の仕方としては破壊的カルトの現状をしっかりと分析して、それを多くの人々に伝えることだと思います。
(注1)
『なぜカルト宗教は生まれるのか』浅見定雄、日本基督教団出版局、一九九七年。
(注2)
『カルト』マーガレット・シンガー、飛鳥新社、一九九五年。
パスカル・ズィヴィー
マインド・コントロール研究所所長。
1980年に来日。その二年後にクリスチャンに。
同じ教会員の家族が統一協会に関わっていたことから、マインド・コントロールに関心を持つようになった。
十年前に研究所を設立。
著書に『「信仰」という名の虐待』『親は何を知るべきか』(ともにいのちのことば社)がある。