書評Books クリスチャンじゃない人にこそ薦めたい

日本キリスト教団・勝田教会 牧師 鈴木光

 

『ソロモンの花』
青山むぎ 作
中野雄一郎 発案
B6判・定価1,430円(税込)
フォレストブックス

勤めていた花屋が一か月後に閉店すると知らされ、同棲していた彼氏に浮気をされて別れることになった主人公のもとに、ストレスで心を壊して仕事を辞めた幼馴染と、親からネグレクト気味の小学生女子と、家庭崩壊寸前の主婦が集まってきて始まる花屋の物語です。

……正直、最初のこの状況設定がされるまでを読んでいる間(冒頭30頁弱)に、うっかり心が折れて書評を投げ出そうかと思いましたが、あきらめずに読み続けてよかった。

本書は中野雄一郎先生の書かれた『聖書力』(いのちのことば社)とのタイアップで描かれています。主人公が『聖書力』を一冊たまたま手にして聖書に興味を持ち、その内容に少しずつ応えようとする中で、登場人物たちの人生が動き始めていきます。

私の感じた一番の特徴は「教会が出てこないこと」でしょうか。まったく出てこないわけではないのですが、先述の主人公の幼馴染の母親が、信仰的に我が子を育てようとするあまりにかえって傷を与えてしまった背景でチラッと出てくるだけでした。つまり、「教会っていいところですよぉ、ぜひ来てください!」みたいな宣伝要素はまったくないのです。

では、地域教会の牧師をしている私としては、あまり教会に置きたくないマンガかと言われれば、むしろ置きたい。いや、教会に置いておくよりも、教会と接点のない人たちにこそ読んでもらいたいと思いました。

それは、登場人物たちが現実的な課題を抱えながら生きていく中で、「聖書にはそれを変えていく力がある」ということを伝えようとしている内容だからです。

これを読んだクリスチャンではない人が、「本当かよ?」と思いつつ聖書を読んでほしい。そして教会は「それは本当だよ」と、現実に聖書を生きている群れであってほしい。そう思いました。思い当たる人がいませんか? 自分でもいいですし、思い浮かんだあの人でもいいです。イエス様に出会う「たまたま」のきっかけに用いてみてください。