~Daily Light~最終回 あなたの日々の光景

石居麻耶 Maya Ishii
千葉県出身。アーティスト。画家。イラストレーター。東京藝術大学大学院美術学部デザイン専攻描画造形研究室修了。
大学卒業後の個展やグループ展等の展覧会やホームページ、ブログで発表した作品をきっかけに本の装画、週刊誌、文芸誌、新聞連載のイラストなどの仕事を担当。

 

雪が積もることには気がついても、雪のように心に降り積もるものには、気づかずにいることが多いかもしれない。雪のように降り積もる何かについて、雪が思い出させてくれることがあります。
たとえば、日々の学び。学ぶということは、知らないことをたくさん見つけるというより、今の自分が本当に知っていることが何であるかに気づくことなのだと思います。知識を詰め込むには限りがありますが、想像する力は限りなく広がってゆくからです。そして学び続けることは、常に気づき続けてゆくこと、気づけるための方法を教わることなのだと思うのです。メモやノートが増えても、すぐそばに咲く花の美しさ、家族や友人の喜びや悲しみ、涙の理由がわからないようなら、それは必要なノートではなかったのかもしれません。

それから、幸せ。幸せは量や距離で測るものではなく、それが「今ここに在ること」を感じられるか、自分が「今ここに居ること」を喜べるかにかかっている気がします。
過去の中にいる自分は今を感じることができず、感動することを忘れたりする。今を感じられる自分は、困難の中でも目の前のことに感動し、微笑むこともできる。自分の力で乗り越えられないことはあるけれども、それは私たちが手を差し伸べてくれる存在やその愛に気づけるために与えられているのではないでしょうか。

路上の鳩が、一枚の羽根を残して羽ばたいてゆきました。雲の向こうのどこかへ。鳩が残した羽根を見ていると、羽ばたける場所はきっとある、そう信じたい、信じようという気持ちになります。それでは、お元気でお過ごしください。またいつか、どこかで。

「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、死ぬなら、豊かな実を結びます。」(ヨハネ12章24節)