書評Books 福音宣教の最前線―使命と祈りの分かち合い

東京女子大学教授 遠藤勝信

『いまを生きるあなたへ 神に招かれて』
安藤理恵子 著
B6変型判 1,300円+税
フォレストブックス

本書は、玉川聖学院の朝の礼拝で、安藤理恵子学院長を通し、高校生たちに届けられたメッセージ集である。当学院が創立七〇周年を迎えるにあたり、記念事業の一環として編纂された。毎日持たれる礼拝を「学校の生命線」(三頁「はじめに」)と位置付け、「それは七〇年来、貫かれてきた本校の心そのもの」(一六八頁)と振り返る当学院にとって、この書はミッションスクールが担ってきた「福音宣教」の証言の記録でもある。クリスチャン人口が一パーセントに過ぎず、教会からの若者離れも案じられる昨今であっても、青少年に「聖書のことばが自然な形で語られ受け止められる可能性」(三頁)が「ここに!」と励まされる。

彼女たちと同年代の頃、「自分にとっての異文化として聖書に出会った」経験を持つ著者は、「同じような葛藤を感じながら聞いているであろう生徒たち」(一六九頁)に寄り添う豊かな想像力と共感力を持つ。思いどおりにならぬ人生とどう向き合えばよいのか。思春期にさまざまなことを学ぶことで新たな悩みに出会い、人生を問うことに空しさを覚えること。他者との比較で悩んだり、ゆるせない心の重荷に押し潰されそうになること等々。

「しかし、ミッションスクールに入学した皆さんは、その悩みの中に鬱々と埋没することにはなりません」(一五頁)、「葛藤の先には必ず出口があります」(五六頁)と、ほんの少し先を行く旅人からの貴重なアドバイス。それは決して結論に至った大人の言葉としてではなく、なおもその問いと向き合い続ける求道者としてのメッセンジャーの在り方が、「生徒たちの日常の中に、みことばが光や風のように入り込む機会」(三頁)を提供しているのだろう。

説教に聴くうちに、いつしか評者も、学院の生徒たちと学院長の対話に巻き込まれ、問いを共有し、みことばより導き出されたその結論に納得するとともに、それが「今日の私にとっても真実なものであり続けているだろうか」(一六九頁)と、問われる体験をさせていただいた。福音宣教の最前線より届いた書のリアルさに、信仰を問い直される一冊である。

 

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