書評Books 賜物を与えてくださった神様がすばらしい

ウェスレアン・ホーリネス教団・札幌新生教会 牧師 岡田順一

 

『マイソング マイライフ』
本田路津子 著
B6変型判 1,400円+税
フォレストブックス

本書は、長くゴスペルシンガーとして全国各地で活躍されている本田路津子さんが、二〇二〇年に歌手デビュー五十周年を迎えたことを記念して出版されました。

一九七〇年、大学三年生であった本田さんは、歌手としてデビューしました。NHKの朝の連続ドラマの主題歌の歌唱。二年連続の紅白歌合戦出場。順風満帆とも思える歌手生活でしたが、その心の中には不安や疲れが蓄積され、才能豊かな他の人と自分を比べて、自信を失っていきました。その頃、レッスン指導の先生から「まだ、絵になっていないね。歌は、聴く人の頭に絵が浮かぶように歌わなくちゃいけないよ」と言われ、「絵になるように歌うことは、私にとって終生の課題となりました」と記しています(二四頁)。

クリスチャンとなった本田さんは、一九八八年より本格的にゴスペルシンガーとして各地で奉仕されました。その翌年、私は福岡市に開拓伝道に遣わされましたが、しばらくして本田さんからご自宅における家庭集会の月一度の奉仕依頼を受けました。家庭集会における本田さんは、特別な時以外は会衆賛美しか歌いません。そこに集う方々は本田さんの歌唱だけでなく、クリスチャンとしての人柄にひかれていたと思います。本田さんは澄んだ歌声と共に、その人柄を通しても神様の愛の絵を見せていました。

ある日、「陶芸教室」のテレビを見ていたとき、本田さんは息子さんに「すてきなお皿ができたわよ」と声をかけました。すると息子さんは「そうじゃないの。お皿じゃなくて、作っているおじちゃんがすばらしいんだよ」と答えたとのこと。「賜物がすばらしいのではない。私を造り、賜物を与えてくださった神様がすばらしい。だから、ご自分の作品である私をそのままで愛してくださる神様に向かって、これからも心からの喜びをもって歌っていこうと思ったのでした」と記しています(六五頁)。本田路津子さんは、素晴らしい神様の愛を歌い続けています。私たちも人生において神様の愛の絵を描きたいと願います。本書は、そのヒントを与えてくれることでしょう。