書評Books 教会のことで悩む人たちへ

日本基督教団・新得教会 牧師 西間木公孝

 

『「信仰」という名の虐待からの解放 霊的・精神的なパワーハラスメントにどう対応するか』
パスカル・ズィヴィー 著
ウィリアム・ウッド 著
A5判 1,500円+税
いのちのことば社

 

共にカルトによる被害相談に関わっているパスカル・ズィヴィーさんとウィリアム・ウッドさんによるこの本の出版を心から喜びます。

私は日本基督教団の牧師として、これまでおもに統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害相談に関わってきました。しかし、ここ数年、いわゆるカルトと言われる宗教団体からの被害相談だけでなく、既成のキリスト教会からの被害相談を多く受けるようになりました。相談を受け始めたころ、まさか教会でそのようなことが起こるはずはないといった思いで被害者の話に耳を傾けていました。

しかし実態を把握していくなかで、相談者の話が事実であると知り、仰天しました。多くは勇気を振り絞って、教会で行われていることに対して「おかしい」と言ったことで被害に遭われました。
本来、勇気を振り絞ってあげた声に対して、教会は検証し、誤っているならば、反省すべきです。しかし実際は、声をあげた人に対して霊的・精神的・肉体的なパワーハラスメントを加え、傷を負わせています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

本書は小さな本ながら、被害に通じる道が事例と共によく記されています。パスカルさんは、この本の中で「信仰」の指導者の教えを鵜吞みにせず、「私」を持つことの大切さを提言しています。「私」を持つということは、自分で考えるということです。

私たちは宗教の前で簡単に思考停止していないでしょうか。知識の問題もありますが、それよりも健全な批判精神がないことが問題なのです。「私」がないと、マインドコントロールによって、自由や人格を奪われ、ついにはその人のすべてが奪われます。

いま、教会のことで悩んでいる人にこの本を手に取って読んでもらいたいと思います。悩んでいることの理由が、もしかしたら自分にあるのではなく、自分の属している教会のほうにあるのかもしれないからです。