書評 イエス様が子どもを見る優しいまなざしといやしを覚える書 『増補改訂版 ゆっくり育て子どもたち  発達相談室で僕が考えてきたこと』

社会医療法人・葦の会 オリブ山病院 理事長 田頭真一

『増補改訂版 ゆっくり育て子どもたち  発達相談室で僕が考えてきたこと』
鍋谷まこと 著
四六変型 1,200円+税
フォレストブックス

現代社会の複雑化と医療的ケア児の増加のなかで、発達障害や小児難病に対する支援の必要性は、日増しに高まっています。そこで医療の役割は大きく、またこころのケア、たましいのケアの必要があります。
人は、からだとこころとたましいが一体である全人的な存在であり、その解決は身体的な医療だけでは不可能です。そこに聖書的な視点をもって取り組むことが大切です。その点で、著者の生い立ちとその働く場がこの本の前提となっていることに、神さまの摂理と著者の召命を見ることができるように思います。
父君は高名な聖書学者の鍋谷堯爾氏で、その信仰を継承した医師の言葉として、聖書的な視点と科学的な理解がしっかりと結びつき、イエスさまのような視点とその愛の実践に感動を覚えます。
著者の働く淀川キリスト教病院は、理念に「からだとこころとたましいが一体である人間(全人)にキリストの愛をもって仕える医療」を掲げています。その理念と伝統が著者を通して、日本で最初の「こどもホスピス」に息づき、新たな実が結ばれていることに大きな励ましを覚えます。著者の優しさと愛が、ご自身の生活とその働きである全人医療に体現され、著作の中で言われる「うん、どん、こん(運・鈍感・根気)」の証し(著者が母親から教えてもらった教訓。本書67頁参照)となっています。
まえがきにあるように「医療者として、援助者として、また息子をもつひとりの父親として」の具体的なアドバイスとして、だれもが「読んでよかった」と思える内容です。
現代社会の大きな課題に応えるために、医療者、障害をもった子どもを育てる親のみならず、すべての人に読んでいただきたい書物です。私たち自身の視点が変えられる必要を教えられます。イエスさまが子どもを見る優しいまなざしといやしを覚えることができます。
私も一人の父親として、キリスト教病院の経営者として、牧師としてしっかりと心にとめ、家族、病院の職員、教会の兄弟姉妹にも必読書として推薦したい本です。