書評Books 災害支援は日本宣教の土壌改良

日本バプテスト教会連合・国分寺バプテスト教会 牧師 米内宏明

 


『「キリストさん」が拓く新たな宣教 災害大国日本に生きる教会と共に』
横田法路 編
A5判 1,700円+税
いのちのことば社
今や、災害大国となった日本の教会が向き合うべき宣教というテーマに十六名の執筆者がそれぞれの立場から取り組んでいる本です。読む者たちに改めて神の宣教とは何であったかを考えさせてくれます。そして何よりも、教会は日本に必要だと改めて納得させてくれる本です。
本書はまるで「日本にある教会の兄弟姉妹へ宛てた手紙」のようです。多様な執筆者(講演者)が宣教、教会、福音など、以下のようなテーマで語っています。
「友情がつなぐネットワーク」「思いやり」「東日本大震災によって試された地域教会の宣教」「阪神・淡路大震災の経験から」「支援の現場から宣教を考える」「九州北部豪雨災害支援活動を経て」「支援団体の立場から」「東日本大震災の経験から宣教を考える」「メディアの視点から考える、支援現場における宣教的視点」「日本における包括的宣教の課題と可能性」「聖書学の視点から」「牧師の霊的形成の視点から」「若者の育成の視点から」「教会形成の視点から」「アジアにおける支援と宣教の視点から」「キリスト者の災害支援の宣教学的意義と今後の課題」です。
一冊にこれだけの内容を盛り込んでいます。

全体に共通しているのは、震災支援を超えた日本の宣教と教会という視点です。方法論ではなく、信仰の本質が浮かんでくる内容です。それは同時に、困難な中における教会の温かさと宣教の力強さを感じさせてくれるものです。
「災害支援活動は日本宣教の土壌改良をするようなもの」(六頁)という横田法路氏(九州キリスト災害支援センター理事長)の言葉や、「利害関係ではない、純粋な友を思うキリストの愛……は、被災地という宣教地において私たちが『キリストさん』と呼ばれていることに表されているのではないか」(六頁)という中村陽志氏(同副理事長)の言葉にそれが表れています。
本書は現代日本における教会の宣教の実例であり、それは初代教会が持っていた福音の魅力なのだ、と気づかされます。