書評books 日本の教会に必要なヒント

キリスト聖書神学校 教授 大庭貴宣


『キリスト教の“はじまり” 古代教会史入門』
吉田隆 著
四六判 1,400円
いのちのことば社
著者は古代教会を「私たち日本の教会の最高のモデル」(一八四頁)と表現します。その理由を、序「これからの日本のために」に見ることができます。「〝圧倒的な少数者”として〝異教社会〟の中で奮闘している私たち日本の教会―とりわけ地方の教会やキリスト者たち―が直面するさまざまな問題や困難と、驚くほど似通ったものがあるのです」(七頁)。
本書を読むと、著者が「小さな教会」や「地方の教会」を、また「今」と「これからの」日本の教会を想う「心」が実によく伝わってきます。古代教会の姿に「これからの日本の教会が目指すべきヒントがあるように思うのです」(一八四頁)と語ることこそ、本書が著された目的であり、読者に伝えたいメッセージでしょう。
さて、本書は第一部「古代教会の進展」、第二部「古代教会の成立」の二部からなります。第一部は、古代教会の成長は驚くべきもの、と始まります。著者はその理由を、教会の外的な要因、内的な要因をあげて説明します。また教会の成長には「伝道」が不可欠です。古代教会の伝道は「誰が、どのように、誰に」行ったのでしょうか。当時の人々にとっての「福音のインパクト」とは? 今日の教会が知りたい内容が満載です。
第二部「古代教会の成立」では、より教会の内面に焦点が当てられ、礼拝、信仰告白、霊性、制度、そして新約聖書正典の成立が教えられます。私たちが毎週ささげる礼拝がどのように古代教会で形成されていったか。「聖書のみ」と信仰告白の関係。異教文化と信仰、異端と正統、とりわけ迫害の中で示された指導者たちの〝信仰のかたち〟。教会制度がなぜ必要かという神学の問題を取り扱います。そして、新約聖書正典。「なぜ二十七文書が正典に?」の問いに対する答えがあります。
本書全体を通して、日本の教会に必要なヒントが教えられますが、それは「歴史の教科書」としてではありません。本書は、教会の歴史は聖霊の働きによることを思い起こさせてくれるものです。