ブック・レビュー 『愛 いのち 平和』
――輝く瞳を世界に

愛 いのち 平和 ――輝く瞳を世界に
古賀 清敬
日本キリスト教会 札幌白石教会 牧師

子どもへの信頼と希望を呼び覚ます

 この本は多くの人々との出会いと協力によってできており、さらにその出会いの輪に自分も加えられたら、との招きに満ちている。

 児童買春や児童労働、家庭崩壊などによって、フィリピンの子どもたちが深い傷を受けている現実。子どもたちの回復を支援しようと設けられた「プレダ子どもの家」の働き。そこにジプニー(フィリピンの乗合バス)を送ろうと募金に立ち上がっていく日本の高校生。それは一人のフィリピンの子どもとの出会いと訴えから始まり、大人の予想をはるかに越えてすばらしい力を発揮する子どもたちの姿が感動的である。

 カナダのクレイグ君は、子どもがおかれている過酷な現状を子ども自身の連帯によって変えていく運動を行い、それは日本の子どもにもたしかな共感を呼び起こしている。

 モンゴルの、学校にも行けず学用品も持っていない子どもたちにノートや鉛筆を送ろうという取り組みは、自分の身のまわりでできることを発見する大切さを教えてくれる。また一方的な贈り物ではなく、それを通してモンゴルの子どもとの交流がはじまり、さらにおとな同士の出会いにも広がっていくおもしろさに胸がわくわくさせられる。

 著者は、最後に、この日本もまた宣教師の献身的奉仕など外国からの多くの支援によって支えられた事実、また在日韓国・朝鮮人の貢献へと思いを向けている。日本の植民地支配と戦後の差別や偏見の中で、民族のアイデンティティーを回復する取り組みから学ぶ人間の本当の優しさ。多民族共生の道を求めていく課題がこの国にあることを語っている。

 評者は、決して感激家ではないが、子どもたちの力のすばらしさに何度かぐっと胸にこみあげるものがあった。いつしか忘れてしまっていた子どもたちへの信頼と、現実を小さなところから変えていく希望とを、あざやかに呼び覚ますものであった。