書評Books 本当に福音を知り、その福音に生きるために

日本長老教会 蓮沼キリスト教会 牧師  遠藤 潔

『五つの“ソラ”から ―「宗教改革」後を生きる』
吉田 隆 著

B6変判 1,100 円+税
いのちのことば社

「ただ信仰のみ(Sola fide)」「ただ聖書のみ(Sola Scrip-tura)」「ただ恩恵のみ(Sola Gratia)」「ただキリストのみ(Solo Christo)」「ただ神の栄光のみ(Soli Deo Gloria)」。本書は、「Sola」(ラテン語の「ただ~のみ」)を冠した、宗教改革の信仰を表す五つの標語を取り扱いながら、宗教改革の基本原理が何を意味するのか、私たちが拠って立つ「福音信仰」とは何かを説き明かします。著者は一貫して聖書に根差し、ルターの言葉に導かれ、教会史・教理史をふまえながら、自身の体験も随所にまじえて、福音の核心と豊かさをわかりやすく、しかも熱く語ります。
私たちは「罪人のまま」、キリストの義(救い)を信じるだけで、神の一方的な救いにあずかることができること(「ただ信仰のみ」)。聖書以外に私たちに救いの道を指し示す言葉はなく、キリスト教会における一切の権威は聖書の権威に服すべきこと(「ただ聖書のみ」)。神の恵みが私たちの心の中に働きかけ、私たちの心をつかみ取るようにして導き、動かし、やがて私たち自身を変えていくのであって、救いは百パーセント神の恩恵であり、人間の功績は一つもないこと(「ただ恩恵のみ」)。イエス・キリストのうちに私たちの救いの根拠があり、私たちはただキリストに、しかも受肉と十字架のキリストに全幅の信頼を置くべきこと(「ただキリストのみ」)。「神がすべてであり、私たちは無である」という姿勢で、ひたすら神の子として生きることを喜び、他者のために心を注ぎ出して歩むとき、私たちは神の栄光を映し出すことができること(「ただ神の栄光のみ」)。
本書はこれら福音信仰の真髄を確認するとともに、私たちの頭上に広がる「空」、社会の空気、時代の雲行きを見つめ、宗教改革者たちが命がけで主張した信仰(五つの“ソラ”)が今日の私たちや教会にどのような意味を持ち、どのような課題を投げかけているかを思い巡らします。
「今こそ、福音そのものにどれほど魅力があるのか、これに生きるということが人間にとってどれほどすばらしいことなのかを、私たちが身をもって示す時代が来ているのではないでしょうか」。くり返し読み味わいたい良書です。