書評 映画「スタンド・バイ・ミー」のような友情と、あの日の奇跡

『ペーパーバッグクリスマス
―最高の贈りもの』
ケヴィン・アラン・ミルン 著
宮木陽子 訳
四六判 1500円+税
フォレストブックス

児童書 編集者 長谷総明

クリスマスシーズンに入ったある日、九歳のモーラーと二歳年上のアーロンは、町の商店街に設えられた丸太小屋に行く。小屋には長い列ができていた。子どもたちが書いたクリスマスに欲しいもののリストをサンタクロースが受け取っているのだ。
モーラーとアーロンは思いつく限り欲しいものをリストに書いた。二人のリストを見て、サンタクロースは「これではぜんぜんだめ」と言う。そして、二人が今までに一度も欲しがったことのないものだが、きっと気に入るものを贈ろうと言う。しかしその代わりに手伝ってもらいたいと言って、町の子ども病院の住所を手渡された。
サンタクロースは、実は両親の友だちである小児がんの専門医ドクター・リングルだった。リングル先生は、病院の子どもたちにできるだけ長くクリスマスシーズンを楽しんでもらうため、そして本当に幸せにしてくれるプレゼントは何かを考えてもらうために、クリスマスまでモーラーとアーロンが病院にサンタクロースの使者として通ってきてくれると紹介する。
本書のタイトルである「ペーパーバッグ」、つまり「紙袋」が何なのかは、二人が病院の子どもたちと接する中で明らかになってくる。そしてキリストの降誕劇を子どもたちが演じるときに、今まで一度も欲しがったことはないけれども本当に幸せなプレゼントをモーラーとアーロンが受け、読者は「ペーパーバッグ」の意味が分かる。
この物語は、今は二人の子の父親となったモーラーが、子どものときの体験を語る構成だが、読み終えたとき、わたしはなぜか映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出した。小説家である主人公が友人の死を知り、十二歳のときにその友人と四人で経験したある冒険を回想し、そのときの友情が今の自分を支えていることを思い返すものだった。
しかし、『ペーパーバッグクリスマス』は、友情よりもさらに大きな主の愛を、私たちが互いに愛し合うことが奇跡を生む最高のプレゼントであることを教えてくれている。