書評 聖書全体を読みこなすことができる

『聖書の全体像がわかる 神の大いなる物語』
ヴォーン・ロバーツ 著、山﨑ランサム和彦 訳

B6判 1,600円+税
いのちのことば社

 

キリスト者学生会 非常勤主事 高木 実

序文で、著者ヴォーン・ロバーツ師自身、大学で神学の学位を取得していながら、聖書の各書巻や特定な箇所の詳細な分析は学んでも、それが互いにどのようにつながっているのか分からず、聖書全体を読みこなすことができていなかった事実に触れている。そのような時期にグレアム・ゴールズワージー著『福音と神の国』を読み、聖書の全体の枠組みが据えられたという。本書はそれと大体において同じアプローチを取っているが、「より専門的でない方法でそのことをしていこう」と願い、さらに「新しく回心した人から成熟した信徒に至るすべてのクリスチャンに、聖書の異なる部分がどのように一つに結びついているのかを見ることができるような概観を提供すること」が目的だという。
その「一つに結びつけている」統一的主題を「神の国」として目次を構成している。第一章 神の国のパターン、第二章 崩壊した神の国、第三章 約束された神の国、第四章 部分的な神の国、第五章 預言された神の国、第六章 現臨する神の国、第七章 告げ知らされた神の国、第八章 完成した神の国……と。「神の国」で一貫してはいるものの、今一つピンとこないかもしれないが、原文(英語)では、Pで始まる単語で“The P~? Kingdom” と統一され、著者自ら「頭韻を踏むように工夫したため、ひとつかふたつ、ややぎこちないものがある」と釈明している。
章を追うごとに要点をまとめた表やチャートのような図などを提示しながら、しかも創世記から始まって、旧約聖書の主要な各書、新約聖書の主要な各書、そして最後のヨハネの黙示録に至るまで、その要点を説明しながら、さらにそれぞれに関連する重要な概念なども説明し、聖書の概観を示してくれる。それが著者の願いどおり「シンプルで、しかも単純化されすぎないもの」となっているのがよい。原題(GOD’S BIG PICTURE. Tracing the Storyline of the Bible)のように、まさに神のBIG PICTUREを見せていただくのに絶好の一冊である。