CD Review ◆ CD評 『inori』

CD「inori」
楠 章二
モバイルコンテンツプロデューサー

あたらしい世代の幕開け

 クリスチャンアーティストが作る音楽には、神様と自分との関わりについて、いろんな表現方法がとられています。

 聖書の言葉を引用するもの、聖書の物語を元に自分の証を歌にしたもの、聖歌賛美歌を編曲したもの。いずれにしても、神様を賛美し、神様と共に歩む人生の素晴らしさを歌ったものが多いようです。

 私がこのCDを初めて聴いた時、正直戸惑いました。なぜなら、今までの音楽で経験してきたような「平安」「癒し」「希望」というものがそこにはなかったからです。

 そこにあるのは、「若者たちの言葉」でした。その言葉には嘘や虚飾はありません。そしてその言葉のひとつひとつが私に強く訴えかけてきたのです。

 このCDには三つの曲が収録されています。「祈り」「Think of…」「哀」。どれもが現代の若者に密接なテーマなのではないでしょうか。

 争いに満ち溢れた世界、不透明な未来、自分が何者なのかさえ分らない。それでもなお、若者たちは祈り求めるのです。

 過酷な「今」を生きる彼らの言葉が、私にはとても切なく哀しいものに思えてならないのです。そして、そこににじみ出る彼らの祈りに、私自身が救われるのです。

 この三つのストーリーは、三人の若者の手で作られています。クリスチャンがアーティストとして表舞台に立つようになった、その次の世代の若者たちです。

 歌うことが身近にあり、楽器を演奏することが身近にあり、なによりも神様をずっと身近に感じてきた世代です。

 ひょっとしたら、彼らは私が思っているよりもずっと軽やかに自分の人生を生きているのかもしれません。幼いころに創造主をおぼえ、その教えと共に生きてきた彼らに、神様は音楽の才能を与えてくださり、彼らは自分たちの言葉で世界にメッセージを発信しているのでしょう。

 そんな彼らが創り出す音楽に、私は新しい息吹を感じています。