21世紀ブックレットシリーズ50巻刊行
―キリスト教界と日本社会の歴史をたどる ◆今の時代に

朝岡勝
日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会牧師

震災からしばらくの間、信仰書や神学書の類いのものが読めなくなってしまいました。自分の心理状態がそれらの言葉を受け入れられなくなってしまっていたのです。もちろん聖書は読み、書物自体は震災以前よりもハイペースで読んでいました。震災後に相次いで出版された被災地からの証言ドキュメント、原発問題を扱った報告書、百冊を超える書物を読み漁るような状態でした。一方で、神学書や信仰書を手にしても震災の圧倒的なリアリティーを前にすると抽象的な言葉の羅列に思え、「だから何?」というような反発にも似た思いを抱いたことを思い起こします。キリスト者の口から震災を見据えたリアルな言葉を聴きたいという飢え渇きもあったのだと思います。
そんなときに出会ったのが「3・11ブックレット」の一連の書物です。シリーズ一冊目の内藤牧師の『キリスト者として“原発”をどう考えるか』は刷りを重ねたように実にタイムリーな出版であり、近藤牧師の『被災地からの手紙』は、「これこそ聞きたかった言葉だ」と何度も頷きながら読みました。続く若井牧師の岩手県・水沢からの報告、なかなか福音派では知ることのなかった日本基督教団「エマオ」についての野田牧師の証言、福島の子ども保養についての中島牧師の言葉、放射能と食の問題を取り扱った東北ヘルプの実践報告、そして最新刊の栗原明子さんによる『ヒロシマからの祈り』。
いずれもブックレットという薄い書物ながら、内容は非常に深く、大きく、豊かなものです。後の時代に残る証しの言葉を、今の時代に生きる人々にまず読んでいただきたい。ぜひ全巻をお揃えになることをお勧めします。

3・11ブックレットの歩み

#1内藤新吾『キリスト者として           “原発”をどう考えるか』
#2近藤愛哉『被災地からの手紙 from岩手 』
#3若井和生『目に見えない放射能と向き合って』
#4野田沢『希望をつむぐ』
#5中島恭子『子どものいのちを守りたい』
#6食品放射能計測所「いのり」 編『食卓から考える放射能のこと』
#7栗原明子『ヒロシマからの祈り』