草ごよみ 4 ウマノアシガタ

ウマノアシガタ
上條滝子
イラストレーター

 春の日を浴びて草の丘に立つ。

 広々と澄んだ青空を真っ白な綿雲がゆっくりと流れ、まぶしく日が降り注ぐ草はらをそよ風が渡って行く。揺れる青草の波間にキラキラと金色に輝く花があれば、きっとこの草の花だろう。近くに行って見れば直径二センチばかりの小さな花。きれいな真っ黄色の五枚の花弁には光沢があるので、本当にキラキラと日に輝く。

 草の名はウマノアシガタ。なんだか耳慣れない名だが、図鑑によればその名の由来は出初めの葉にあって、遠目では馬の脚形、つまり馬蹄型に見えるからとあるけれど、実際にはとてもそんな風には見えなくて、首を傾げたくなる。

 一般にキンポウゲとも呼ばれるが、元来それは金鳳華と書いて、八重咲きの品種の名なのだそうだ。

 けれど目を閉じて思い浮かべてみる野原で風に揺れている光のこどものようなこの花の名こそ、キンポウゲがぴったりだと思う。

 イエスさまはある日、群衆を前に様々に語られた後、人々を五十人、百人と組にして草の上に座らせ(そこには草が多かった)五つのパンと二匹の魚を天を仰いで祝福し分けて弟子たちに配らせられた。そしてそこにいた五千人を越える人々は一人残らずみな満たされたのだ。

 光あふれる草の丘で──。

 これは私の中に広がる大切な草の丘。