草ごよみ 2 フキノトウ

フキノトウ
上條滝子
イラストレーター

 小春日和の暖かな日が続いて、ご近所の生垣の下にフキノトウを見つけた。

 写生をしながらよく見ると、出始めたばかりのまだ小さく固い薄緑色の紡錘形をしたもの、そっと一枚ずつ鮮やかな黄緑色の鱗片葉を広げ始めたもの、その幾枚ものおくるみを、まるで一つの明るい大きな黄緑色の花のように、すっかり広げて、その中心の花の蕾のかたまりも一つずつふくらみ始めているものがある。フキノトウの生まれたばかりの赤ちゃん、幼児、子どもがそろったようで楽しい。

 フキノトウはたくさんの鱗片葉に包まれたフキの花の集まりだ。地下の根茎でつながっているけれど、葉とは別に花が先に春早くから地上に顔を出す。雌株と雄株とがあり、雌花と雄花も分かれて、それぞれの株につく。

 花が咲けば雄花には花粉があるので全体に黄味がかって見え、雌花は白っぽい。

 「何してるんですかぁ」と学校帰りの子どもたちに囲まれる。「これ、フキノトウを写生してるの」「あっ、知ってる。すっごく苦いんだよね」「わぁ、上手だな」「本物みたい」なんて元気な男の子や女の子に褒められて私もちょっとうれしい。やがてみんなで「ありがとうございましたあ」と明るい声を残して帰って行った。

 写生を終え、私も子どもたちに倣って、フキノトウとこの家の方に、そっと「ありがとう」を言って帰ってきた。