草ごよみ 11 ヨメナ

ヨメナ
上條滝子
イラストレーター

 この頃ようやく決心したことがある。長い間、毎年この時期になると大好きなヨメナのことで私は一人ぐずぐずと思い悩んできたので、そろそろすっきりしたいと思っている。

 というのもヨメナとカントウヨメナ、ユウガギクの見分け方が何となくすっきり納得いかないのだ。数種の図鑑の解説と図版や写真を見比べると微妙な違いが今一つはっきりしないし、実物はもっとどっちともいえない様子をしていて、いつもかすかな疑問を残して野菊の季節を見送ってきた。

 この三種類は花だけ見れば本当にとてもよく似ている。区別する根拠はユウガギクの場合、葉が普通は深く切れ込んで羽状になるけれど、そうならないものもあり、そうなるとカントウヨメナとの区別はむずかしいそうだ。ヨメナとの違いは種子の形とその頭に付く毛の長さの違いだけれど、それは〇・二五~一ミリの間のことで、あいにくいまだに種子を採取できたことはない。染色体の話にまで及べば素人はお手上げになる。

 数年前、西伊豆の田んぼの畔に咲き乱れていた、これこそヨメナと大喜びで少しもらって帰りベランダの植木鉢で育てていたものが、五年目を迎え、とうとうカントウヨメナとちっとも違わなくなってしまったのを見て、ヨメナは関東にはないと(理由は書いてないが)言い切る図鑑の一文を涙を飲んで受け入れることにしたのだ。

 「♪やさしい野菊 うすむらさきよ」とハミングしながら晩秋の野山を思い浮かべている。