324 時代を見る眼 病とともに生きる〈3〉闘病生活を経て 現在

神学者/作家 ウォルター・ワンゲリン

15年前「癌」のステージ3Bと聞かされたとき、もちろん驚き、ショックを覚えた。しかし、癌という病そのものが私を精神的に落ち込ませることはなかった。もちろん、病状が進んでいるのを目の当たりにし、嫌だなと思うことはあった。

自分でも驚いたことだが、「クリスチャンであること、神と共に永遠に生きる者にされたということは、こういうことなのか」と、今まで以上に思わされたのである。妻も家族も、友人も大学の学生たちも、癌の中で生きる私の姿を見て驚き、「主を知ること」の大切さ、意義を感じたのだった。

放射線治療により髪が抜けても平安、治療後、疲れきって帰途につく中でも主の平安があった。与えられたこの命、この息は主のものなのだという確信があったからだ。

人間であるかぎり、いつかはこの冒険の旅は終わり、主と共に過ごすことになるのだから。

「『しかり、わたしはすぐに来る。』アーメン。主イエスよ。来てください」(黙示22・20)。主イエスの恵みが、すべての者と共にありますように。その時までは、静かに、主を待ち望みます。ただ、静かに何もしないでではありません。主から託されたこの地上での働きを続けながら、静かに歩むのです。永遠の主を喜びながら。
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〔妻サーンより〕
夫ウォルターとの「冒険の旅」が、まさか15年以上も続くとは、想像もしていませんでした。
最初の数年はとても慌ただしいものでした。家族にこの「冒険の旅」の説明をしたり、友人をお別れの食事に誘ったり、葬式をどのようにするかなど話し合ったりしました。

でもそれは、「主の時」ではありませんでした。夫と私にとって、この旅は考えていた以上の新しい発見、恵み、あわれみ、父なる神の愛に満ちた「冒険の旅」でした。

「癌のご主人の世話は大変でしょう」とよく言われます。最初はそう思いました。しかし、これまでとは違った、私たちふたりに与えられたこの世界での時に、気づかされたのです。「主よ、今日はどのような冒険がありますか」とふたりで祈り、与えられた人生を楽しんでいます。まだまだ、この旅は続きます。いつまで? それは神だけがご存じです。その時まで、この地上で与えられた人生を夫と共に味わい、楽しもうと思います。