時代を見る目 216 3・11――あの日の記憶、そして今 [9]

ジェント・マイカ
現・3.11いわて教会ネットワーク スタッフ

震災当時、大学生だった私は夏休みを利用して、岩手県の被災地にボランティアに行きました。当初は“モバイル・カフェ”をやるなど夢にも思わず、ただ岩手県に向かいました。6月に父から電話を受け、「移動式のカフェをやることになったから」ということで、一旦青森県に戻り、必要な道具をそろえました。テント、発電機、折りたたみ式の椅子やテーブル、クーラーボックス、コーヒーメーカー、またカフェIrisの提供によりアップルパイ、クッキー、アイスコーヒーやジュースを積み込み、再び被災地にやってきました。
大槌町や釜石市の仮設住宅を中心に活動を開始しました。曜日を決め、毎週6つの場所に行くようになり、多くの方々と出会うことができました。時には、ほかのボランティアが手伝いにきてくださり、同時に3か所でモバイル・カフェをしたこともありました。
週が過ぎていくにつれ、顔馴染みとなり、一緒にカフェの準備をする人たちもいました。カフェで一日中過ごしたり、一日数回たずねてくる人もいました。そこで一緒にコーヒーを飲みながら彼らの体験を聞き、また時には自分の証しをする機会も神様が与えてくださいました。モバイル・カフェでは、飲み物やおやつだけでなく、本をあげることもありました。テーブルに置いてある本をその場で読む人、孫のために絵本をもっていく人、本を持って帰って翌週に質問をする人など、本を通しても神様のことを伝えることができました。また地域の学校が夏休みになると、カフェの合間に子どもたちと遊ぶこともあり、楽しいひと時でした。

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この執筆を頼まれ、モバイル・カフェをしていた時のことを、いろいろ考えました。カフェは、被災者とボランティアが出会うだけでなく、被災者と被災者が出会う場所でした。確かに私たちが被災者と出会うところでしたが、彼らの止まっていた時間の中で私たちが彼らと出会い、関係を築きあげていく場所になりました。彼らのいる居場所で彼らのことを知ることができ、また自分の証しをしたり、本を通しても神様の証しをする機会を与えられ、ただ神様に感謝をするしかありません。