小さないのちが教えてくれたこと ◆母の胎にいるときから

水谷潔氏
小さないのちを守る会 代表

日本では、中絶は〝必要悪”と思われている面が強い。「四人家族が多いですよね。第三子は、中絶される確率が七割です。家族計画じゃなくて中絶されているんですよ」。今の六十歳以上の人たちは、「半数以上が中絶経験者」とも言われているそうだ。そこには、男性は女性、女性は子どもと、より弱い者を犠牲にしている現実がある。
また、「文化の違いですね。例えば、クマが襲ってきたときに、日本の母親は子どもを抱きかかえて背中をむけますが、欧米人の母親は大の字に立って盾となり、子どもを逃がすと言います。日本人は、子どもは自分と別人格であるとの他者感覚に欠けるようです」
産まれてくる〝子どものために”と中絶を選択する女性は多い。
「本当に多いです。子どもを不幸にしたくない。養子に出すくらいなら、自分で育てられないなら中絶する。でもそれは、子どもを大事に思っていないですよね。子どもには生きるという『生存権』があるはずです。お腹の子を自分の所有物だと思うと、中絶は自分が判断することになります。でも、だれにでも生きる権利があって、それを奪う権利はだれにもないのです。産まれてくれば、幸せになる可能性がある。胎児も、私たちと同じく人格をもつかけがえのないいのちです」
聖書には、胎児をひとりの人格として認めていることばが書かれている。

「生まれる前から、私はあなたに、ゆだねられました。母の胎内にいた時から、あなたは私の神です」(詩篇二二篇)
「あなたの目は胎児の私を見られ、あなたの書物にすべてが、書きしるされました。私のために作られた日々が、しかも、その一日もないうちに」
(詩篇一三九篇)
「中絶やいのちについては、親と教育機関が教えるべきです。そして実は、教会が教えるべきです。いのちの尊厳は、聖書が示す神との関係が根拠になっているのですから」