家族の危機が祝福に変わる 話題の新刊『ヨセフの見た夢』 さわり読み

『ヨセフの見た夢』

 「兄弟たちはヨセフを売り飛ばしたことを、過去のこととして、忘れ去ってしまっているわけではありません。あれ以来ずっと問われ続けているのです。(中略)神を恐れているので、神の御顔のことを考えます。神が遠く離れて立っておられて、怒っておられるようにも思えるのです。それは苦しい重荷です。しかし、そのような経験は信仰者にとって健全な経験です。悔い改めるまでその痛みは続きます。そして、神との和解が求められています。

 ヨセフはそれ(創世記42・21)を聞いていました。そして、彼らから離れて泣いたと書いてあります。兄たちのうちに働いている神のみわざを知って流す涙でもあります。弟を売り飛ばして平気でいた兄たちではありませんでした。神の民であることを確認したのだと思います。同時に、兄たちの神の前での罪責の苦悩のことも考えたのではなかったでしょうか。(中略)

 イスラエルの家族は、このことでみな、苦しみました。特定の息子への偏った愛情によって子どもを失い、悲しみのどん底に落とされた父親のヤコブ、憎しみとねたみにかられてヨセフをエジプトに売り飛ばし、それ以来罪の意識にさいなまれてきた兄弟たち、そして、自分の無神経さや配慮のない態度の結果、エジプトに売られ、傷ついた心と孤独の中で苦しんでいたヨセフがいます。彼らは、それぞれに重荷を負って歩んできました。

 しかし、その彼らに不思議な神の御手が静かに伸ばされているのです。そして、やがてこの家族は、和解と一致の恵みを味わう経験へと導かれていきます。」
 (103、104頁より)