国を愛する心と「愛国心」 知っていますか?靖国神社に祀られているもの

(編集部)

 九段下にある靖国神社の境内に足を踏み入れた時、都心の真ん中でこれほど広い敷地をきれいに管理し続けることができる宗教施設の存在に驚き、すこしうらやましく思った。晴れているのに、なんとなく薄暗いという神社がもつ独特な雰囲気を感じながら境内を一巡りし、敷地内にある資料館「遊就館」へと向かった。 入り口へ続く道に「”今、蘇る日本近代史の真実”戦争を知らない世代に伝えたい。この感動……」と書いた看板が掲げられていた。多くの人が命を落とした戦争を「感動」と伝えるメッセージに思わず目を疑った。

 靖国神社はいったい何をまつっているのだろう。展示室に入ると、こう書かれていた。

 「この国の自存独立が危うくなったとき、つねに矛をとり第一線に赴いたつわものたちがいた。国の鎮め。命をかけて国を護り、郷土を守り、家をまもり、近代日本の礎となった将兵たちのいさおしをたたえ、御霊を慰め、安らかに鎮まるのを祈るところが靖國神社である」。

 遊就館は、日本の伝統と歴史を守るため、そして独立と平和が続くことを願って戦い尊い命を捧げた先祖たちを「英霊」として祀り、「国家の守護神」として、今も日本を守っていると語る。また、「国を愛し」命まで捧げた人々の存在があったからこそ今の日本があると強く訴えてきた。

 そして一貫した歴史観があった。日本だけではなく、アジアを欧米列強の侵略から守ってきたという歴史観だ。最終的には負けたけれども、アジアの国々は輝かしい独立を果たしていったではないかと、過去の戦争を評価する。

 軍歌を背景に日本軍が勇敢に戦い勝利を収めた日露戦争の映像を観れば、「日本人ならば、日本を愛し、日本を守るために戦おう。それはすばらしいことではないか」との思いが起こってきても不思議ではない。もし、靖国神社の思想に対し、あえて反抗する意志を持っていなければ、「愛国心」を鼓舞され、「国」のため戦いに出ていく若者も現れるのではないだろうか。

 日露戦争の映像を見ている青年男性が多くいた。平日の昼間に、遊就館を訪ねる彼らはいったいどういう人たちなのかと思っていると、しばらくして自衛隊員を呼び出す館内放送が聞こえてきた。