三浦綾子没後10周年
 三浦作品で福音を伝えよう! 全国五十か所以上で開催 三浦綾子読書会


(いのちのことば社『三浦綾子に出会う本』より/撮影:小林恵)
長谷川 与志充(よしみつ)
三浦綾子読書会代表

 三浦綾子さんが召されたのは一九九九年十月十二日ですが、それから二年近く経った二〇〇一年七月に三浦綾子読書会は発足しました。東京でスタートした読書会は、翌年には全国の主要都市に飛び火し、約八年が経過した今では北海道から沖縄まで全国五十か所以上で活動が行われています。昨年二〇〇八年からは海外(台湾、東南アジア、アメリカ)の日本語教会でも活動がスタートし、三浦綾子さんの蒔かれた種が全国は勿論のこと全世界でも実を結び広がり続けているのを実感しています。

 さて、召天後十年を経過してもなお衰えを知らず、ますます増え広がり続けている三浦綾子文学の魅力とは一体何なのでしょうか。

 ここでは『氷点』(角川書店)の一節からその魅力をお分かちしたいと思いますが、それは洞爺丸台風の時に自らの救命具を若い女性に与えて死んでいった宣教師の最後の言葉に象徴的に示されています。

①ドーシマシタ? ソレハコマリマシタネ

 救命具のひもが切れ、泣いていた女性に宣教師はこのように語りかけました。この女性の姿は、救命具のように自分の命を支えていたもの、例えば仕事やお金、配偶者や子供などを失い、絶望の中で泣き悲しんでいる人を代表しているように思いますが、三浦綾子文学はまるでその宣教師のように「ドーシマシタ? ソレハコマリマシタネ」とその悲しんでいる読者に語りかけてくれるのです。この悲しんでいる人に寄り添う愛こそ、三浦文学の第一の魅力です。

②ワタシノヲアゲマス

 宣教師はその絶望的な思いで泣いていた女性に「ワタシノヲアゲマス」と自らの救命具を渡します。それはまさに命がけの愛でした。三浦綾子さんはその生涯を通して命がけで自らの救命具、すなわち「キリストの福音」を私達に与えて下さいました。その結果、多くの人々はどんな悩み苦しみにも打ち勝って生きることができる、キリストの永遠の救いにあずかることができたのです。この永遠の救いを明確に提示していることこそ、三浦文学の第二の魅力です。

③アナタハワタシヨリワカイ。ニッポンハワカイヒトガ、ツクリアゲルノデス

 最後に宣教師は救命具を渡した女性にこの言葉を遺しました。これは三浦文学を通して永遠の救いにあずかった人々に、三浦綾子さんが伝えたかった最後の言葉と言えるでしょう。綾子さんは私達に「日本はあなたが作り上げるのです」と熱く語りかけておられます。その方法とは日本のすべての人々に真の救命具である「キリストの福音」を宣べ伝えていくことです。この伝道に生きる使命を私達に与えて下さることこそ、三浦文学の第三の魅力です。


 最後に、三浦文学を伝道に用いる方法とコツについて書いておきます。三浦文学はストレートに福音を語っている作品と、間接的に福音を語っている作品の二種類に大きく分けられますが、素直で熱心な求道者には前者を、否定的で冷めている人々には後者を用いることがポイントです。前者としては『塩狩峠』、『道ありき』、『光あるうちに』(以上、新潮社)、『新約聖書入門』(光文社)、後者としては『広き迷路』(新潮社)、『裁きの家』、『残像』、『果て遠き丘』(以上、集英社)などが代表作です。

 病める方への伝道には『天の梯子』(集英社)がお薦めです。特に、この第四章の「病めるときに」という箇所は、病んでいる方だからこそより信仰の重要性を理解できるすばらしい箇所です。

 本を読むのが難しい方には、名言集、絵本、朗読CDはいかがでしょうか。名言集では『言葉の花束』(講談社)、『愛つむいで』(北海道新聞社)、絵本では『したきりすずめのクリスマス』(ホームスクーリングビジョン)、朗読CDでは『塩狩峠』(ハーベストタイム)をお薦めします。